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2012年03月15日

危機をバネに飛躍する

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  東日本大震災が発生してから既に一年が経過しましたが、この大震災は我々日本人の意識を根底から覆すことになりました。大地震やこれに伴う大津波に対する備えの弱さ、絶対安全であると言われていた原子力発電の危険性、サプライチェーンの分断による効率化を追求してきた生産システムの弱点、復興対策に遅れをもたらした政府のリーダーシップの欠如等数々の問題点が一挙に噴出しました。
  振り返ると、日本経済はバブル崩壊以降〝失われた20年〟と言われているように停滞が続いています。とりわけGDPは増えずジリ貧状態の中での小手先の改善に終始してきています。多くの人がこのままではまずい、何とかしなければと感じていたのは間違いないと思います。しかし、一方で、まだまだ何とかなるという甘い考えで課題を先送りしてきたということではないでしょうか。言い換えると完全に〝ゆでガエル現象〟に陥っていたのです。今回の大震災はぬるま湯から〝飛び出せ〟というメッセージを我々に突きつけました。この結果、迅速に動いたのは生き残らなければならないという危機感を持った企業です。そして、短期間のうちにサプライチェーンを修復すると共に製造拠点を見直し、工場の国内外への移転等を実施しました。しかし、この一方で、政府の対応を見ると、一年経った今も、がれき処理や原発の補償等のスピードが遅く、被災地の本格的な復興は進んでいません。また、電力供給という点でも明確な方向性を示せない状況が続いています。ビジョンやあるべき姿を明確にし、誰が何をいつまでにどうするというステップを作ることが必要ですが、これはまさに経営そのものです。
  今回の大震災を真正面から受け止め、この危機をバネにして将来の飛躍に結びつけることが大切であると感じています。

2012年03月02日

エルピーダメモリの破綻

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  この度、日本唯一のDRAM専業メーカーで、世界第3位のエルピーダメモリが会社更生法の適用を東京地裁に申請して倒産することになりました。
  負債総額は4480億円となり、国内の製造業の倒産では過去最大規模になります。経営が悪化した原因は、一口で言うとサムソン電子や台湾メーカー等との厳しい価格競争に負けたということですが、さまざまな理由をあげると、次のようなことになります。これらの海外メーカーは大規模投資によりDRAMのコストを下げることを達成したが、エルピーダメモリは十分なコストダウンができなかった。また、円高とウォン安の影響で、輸出の採算が悪化した。更にDRAMを搭載するパソコンや家電製品が売れなくなり、DRAMの価格が急落した。等です。
  このDRAM事業は20世紀末頃には花形産業として世界に名を馳せましたが、国際競争力が激化し、1999年にNECと日立製作所がDRAM事業を統合して同社を発足させ、その後2003年には三菱電機の事業も吸収することになりました。また2009年 6 月には、世界においてもトップクラスのDRAM の開発、設計技術を有していることが評価され、経済産業省より「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」に基づく事業再構築計画の認定を受けました。
  半導体は「産業のコメ」と言われており、日本におけるモノづくりを支えてきた基幹産業です。これまでオールジャパン体制で事業展開をはかってきたメーカーの倒産は、日本にとっては大きな痛手になるのは間違いありません。ソニー、パナソニック、シャープをはじめ日本のエレクトロニクス業界は非常に厳しい状況になっていますが、知恵を結集して、この難局を乗り切って欲しいと思っています。

2012年02月20日

国の借金と財政再建

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  財務省によると、現在国債や借入金などを合わせた国の債務残高、借金の総額は既に900兆円を超え、今年度末の時点では1年前に比べて99兆円増えて、1024兆1047億円となる見通しです。これはGDP比で見ると、財政危機に陥ったギリシャをはるかに上回る突出した金額ですが、日本が大きな財政危機に陥っていないのは、その約9割を国内の銀行等が個人の預貯金を経由して買っているからです。また、震災復興のための復興債の発行等、国の借金は今後もさらに膨らむのは確実な情勢です。このままでは、日本の借金の増加は雪だるま式に増加し歯止めが利かない状況に陥ってしまいます。それでは日本はこの先、いくらまで借金できるのかということが問題になりますが、上限の目安は日本人の家計の金融資産の総額約1400兆円ではないかと言われています。
 しかし、そう安心してばかりもできない理由が出てきています。実は国内の家計の総資産から住宅ローンなどの負債を差し引くと、“純資産”は約1100兆円しかないということです。そして、引き続く景気低迷のために貯蓄率は鈍化してきており、株や社債などのリスク資産も目減りしてきています。また、これらの金融資産の大半を保有しているのが高齢者であるため、今後は貯蓄を取り崩す動きが強まってきます。そうすると、いずれ近い将来には国の借金が家計の純資産を上回ってしまう可能性が出てきます。この結果、国債の国内消費のウェイトは減り、外国から借金する比率が増え、ギリシャと同様の状況になり、最悪の場合デフォルト(債務不履行)ということになってしまいます。
 現在、税と社会保障の一体改革が議論されていますが、社会保障の給付は維持して欲しい、税金は払いたくない、という〝つけの先送りの姿勢〟ではいつまで経っても課題は解決しません。また、公務員の人件費や国会議員の定数、公益法人の削減、公共事業の見直し等の支出も徹底的に抑制しなければなりません。要は痛みを伴う思い切った改革を断行しなければならないということです。更に、環境等の新たな産業の創出を行ない、雇用を確保し、税収を増やす政策も必要となってきます。どれを取り上げても簡単に解決できるものではありませんが、〝後世に負の遺産を引き継がない〟という強い姿勢が必要であると思っています。

2012年02月18日

注目すべき新エネルギー~シェール・ガス

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《米エネルギー情報局(EIA)による主なシェールガス層の分布図》

  この度、大手商社の三菱商事がカナダ西部にある世界最大規模のガス田の開発と生産を行なう権利の40%を、カナダの資源会社から取得することで合意したというニュースが報道されました。このガス田の埋蔵量はおよそ7.2億トンと見込まれており、日本で消費されている天然ガスの9年分の量に相当するということです。三菱商事は更に、開発する費用も負担することにしており、投資額は合わせておよそ60億カナダドル(日本円にしておよそ4700億円)に上ります。
  近年、石油に代わる代替エネルギーの獲得を目指して、国家レベルや企業での動きが活発になってきています。その中で注目を浴びているのが、このシェールガス(shale gas)です。これはシェールという言葉からも分かるように、これまでのガス田から生産される天然ガスとは異なり、頁岩層から採取される天然ガスです。  
  既に、アメリカ合衆国では1990年代から新しい天然ガス資源として注目を集めてきましたが、従来のガス田よりも深い地中に存在するため採掘方法が難しいという課題があり、開発はあまり進んでいませんでした。しかし、採掘技術の飛躍的な向上と石油や天然ガスの価格高騰等により、その生産に弾みがつきつつあります。また、カナダ、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアの潜在的シェールガス資源も注目され、2020年までに北米の天然ガス生産量のおよそ半分はシェールガスになり、更に世界でのシェールガス開発が進むとエネルギーの勢力分布が変わることも予想されています。

  日本では原発事故のあと、火力発電向けの天然ガスの需要が拡大しており、エネルギーの安定確保に向けて、さまざまな取り組みが行なわれていますが、歴史的な円高を強力な追い風として海外における資源分野への投資を拡大している商社の動きについても大いに注目していきたいものです。

2012年02月16日

注目すべき新エネルギー~メタンハイドレート

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メタンハイドレート
  我々日本人がしっかりと認識しておかなければならないのは、食料とエネルギーです。これまで何回かにわたって取り上げてきていますが、食料の自給率は39%、エネルギーの自給率は18%しかありません。これらは共に生活必需品であり、世界の人口が急増している中にあっては深刻な不足に陥る恐れがあります。貿易立国である日本はこれまで国際収支面での大きな黒字を確保してきました。そのため、多少国際価格が上昇しても何とかこれらを安定購入することができていました。しかし、製造業の輸出減少に伴い、貿易収支が恒常的に赤字になる危険性が出てきています。これを打破するためには従来の延長線上の考え方ではなく、全く新しい取り組みが必要になってきます。

  このような状況下にあって、昨日エネルギー資源についての新たな動きが伝えられました。これは次世代のエネルギー資源として期待されるメタンハイドレートの産出試験が始まったというものです。この産出試験が行われているのは、愛知・渥美半島の南方沖70kmの海域で、探査船「ちきゅう」によって、およそ1,000メートルの海底に4本の井戸を掘り、メタンハイドレートを分解してガスの採取を行なうことになっています。
  このメタンハイドレートは、メタンガスと水が結晶化した氷のような物質で、〝燃える氷〟と呼ばれています。日本近海にはオホーツク沖、十勝・日高沖、南海トラフ、四国沖等に大量に存在しており、国内の天然ガス消費量のおよそ100年分以上に相当する膨大な量が埋蔵されているとみられています。そのためこのメタンハイドレートを有効活用することが出来れば、日本はエネルギー資源を外国に頼らなくてよくなる日が来ると期待されています。また、世界全体のメタンハイドレード埋蔵量は原油埋蔵量の2倍とも推定されており、メタンハイドレートによる天然ガス資源量は在来型天然ガス枯渇時代の次世代を担えるだけの膨大な量にのぼるのは間違いないと考えられているのです。
  日本は国土面積においては世界で61番目ですが、まわりを海に囲まれているため、海洋面積は6番目です。この海洋こそが日本の最大の資源なのです。海洋にはまだまだ未開拓の部分が数多く残されています。メタンハイドレートを実用化するためには新しい技術改良や資金が必要ですが、世界をリードする再生エネルギーの開発に成功して欲しいと思っています。

2012年02月14日

需要を創造する

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 現在、日本では個人消費が低迷し、各業界においても何とか消費者の財布の紐を緩めようと躍起になっています。スーパーやデパート等に行くと、生活必需品については毎日のように特価やバーゲンが行われています。しかし、目の肥えた消費者は商品を吟味して購入するため、なかなか販売額を増加させることはできません。このような状況下にあって、多くの企業は新たな需要を創造するためにさまざまな販売策を編み出してきています。
  我々の身近にある2月のイベントと言えは、バレンタインデーと節分ですが、この2つにも企業の血の滲むような努力があります。バレンタインチョコレートを贈るという習慣は元々日本にはありませんでした。しかし、チョコレートメーカーの営業担当者が何とか販売を伸ばしたいという一心で、この日にチョコレートを贈る習慣を定着させ、ついに1960年代には「女性が心からチョコレートを贈ることによって男性に愛を告白する」ということに成功したのです。しかし、最近では女性が同姓の友達に贈る「友チョコ」や男性から女性に贈る「逆チョコ」が増えてきているため、メーカーは新たな対応を取るようになってきています。
  また、節分の日の〝恵方巻きの丸かじり〟もコンビニやデパート、スーパー業界の努力で定着しつつあります。更に、最近では年間に土用が4回あることから、夏だけではなくその他の季節の丑の日にも、鰻を食べる習慣をPRし始めています。
  これらは日本国内の例ですが、これからのグローバル社会においては、他の国の文化や習慣を日本に取り入れる、逆に日本のものを海外に展開するということが頻繁に起こってきます。 まさに、これからは広い視野で知恵を絞り出すことが大切な時代になってきているように感じています。
 

2012年02月06日

Unlearningの大切さを学ぶ

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  先日、コダック社の破綻や日本の電機各社のテレビ事業の見直しの例を取り上げましたが、過去の成功体験というのはなかなか捨てきれないものです。〝失敗は成功の母〟という言葉がありますが、〝成功は失敗の母〟でもあります。
  最近の企業経営を見ていると成功体験があったために大きな失敗をしているというケースが散見されます。これらの失敗の原因は時代の変化を読み違えていることがほとんどです。今の時代の特徴は、これまで10年かかって徐々に変化してきたことが1年で急激に変わるということです。以前、時代がゆっくりと流れている時には業界の順位というのはほとんど変わりませんでした。しかし、最近は1年で順位が急激に入れ替わるようになってきました。時代の変化が小さい時には概して成功を積み上げていくというやり方が有効であったように思いますが、大きく時代が変化している時には、何事を行なうにもスピードが要求されます。しかし、これは反面大きなリスクを伴うことになるのです。つまり、急ぐあまり誤った経営の意思決定を行なうと期待された成果は得られないばかりか、大きな投資が伴う場合には取り返しのつかないことになりかねません。
  過去にうまくいったという理由で同じ手を使いがちですが、このやり方ではうまくいかないことが多いのです。薄型テレビの大型投資等はまさにこの典型的なパターンです。自らの技術力を過信し、大量生産することによってコストを下げ、大きく販売を伸ばした過去の成功体験が今回の経営危機を招いたのです。経営にとっては、これまでの成功体験を忘れ去り、今一度原点に戻って考えるというUnlearningが大切であると痛感しています。過去のさまざまな例を見ても失敗の芽は成功の時に生まれやすいのです。
  現在、本校の経営は比較的うまくいっていると思いますが、これまでの成功体験を一旦白紙に戻して時代の変化とライバル校の動きをしっかりと読み取り、新たな施策を打ち出していきたいと思っています。
  
  

2012年01月31日

経営戦略の重要性~日本の電機各社のテレビ事業

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  これまで日本の代表的産業であった電機業界における各社の経営が深刻な事態に陥っています。この大きな要因は、これまで経営の柱であったテレビ事業の不振です。テレビの歴史を見ると19世紀に基本技術の研究が進み、最初に1925年に機械式テレビが開発されました。そして1928年に浜松高等工業学校の高柳健次郎氏によってブラウン管テレビが開発、1953年(昭和28年)に国産第1号のテレビが製作、1960年(昭和35年)にカラーの本放送が開始されました。そして、日本の電機メーカーは競ってテレビ事業を強化し、日本市場だけではなく輸出の拡大を図っていきました。このテレビの基幹部品はブラウン管でこの性能の優劣が画像の質を決めることになりますが、欠点は奥行きの幅がいるということです。これを解消するために薄型のパネルを表示装置にするテレビの開発が進み、1990年代後半に薄型テレビが登場しました。21世紀に入って、プラズマは大型から中型へ、液晶は小型から中型、大型への開発が加速され先進国で一気に普及が進み始めました。そして、コストダウンをはかるために、各社が競って大型投資に踏み切りました。このため世界的に見た場合にはパネルは供給過剰になり、テレビの価格低下に歯止めがかからない状態になってしまいました。各社は付加価値を挙げるために3D搭載の商品等を発売しましたが、なかなか市場から受け入れられませんでした。更に国内ではエコポイントの終了に伴い、販売が低迷し急増した在庫を捌くために、価格が急激に低下し投売り状態になってしまいました。また、輸出も急激な円高のために、韓国メーカー等に対抗できず、日本の電機各社は巨額の赤字を計上することになったのです。このような例は電機業界だけではなく他の製造業や小売・外食業界にも散見されます。
  翻って、教育界を見ても少子化の中で経営的に行き詰まる学校が出始めています。本学園は大きな規模ではありませんが、世の中の動向をしっかりとらえて経営の舵取りをしていかないと同様のことが起こらないとは限りません。危機感を持って本学園が置かれている状況をしっかりと分析し、課題を絞り込み、更に充実した教育活動を進めていかなければならないと考えています。

2012年01月28日

グローバル化の進展~④人材の獲得競争

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  グローバル化の進展には「人・モノ・カネ・技術・情報」等さまざまな潮流があります。既に、このブログでも人のグローバル化について何度か取り上げてきていますが、どのようなことでもやるのは人であり、人質の優劣が成果に結びつきます。昔から〝経営の根幹は人である〟と言われていますが、これからは世界中で優秀な人材を獲得する動きが加速されることになります。現在、日本においては大学生の就職が非常に厳しい状況になっています。しかし、企業が必要としている人材は共通しており、数社から内定通知をもらう人がいる一方で、100社を受けてもどこからも内定がもらえないという人もいます。
  内需が低迷する中で、日本経済を成長させていくためには新興国の需要を取り込んでいかなければなりませんが、そのためには海外で活躍していく人材が必要になってきます。これまで日本企業は、あくまで国内で日本人の学生を中心に採用活動を行なってきました。そして、海外事業にあたっても日本人のトップを中心に経営を推進してきました。しかし、最近では経営の現地化が進み、トップにも現地人を起用する企業が増えてきています。つまり、国籍に関係なく優秀人材を採用する『グローバル人材の獲得競争』の動きです。このことは、就職にあたっての競争相手が単に日本人だけではなくなるということです。
  また、これから2050年までに輩出されてくる労働人口という観点で見ると、97%は総人口が急増する発展途上国が占めることになります。そして、新興国の大卒労働者が現在3300万人であるのに対し、先進国の大卒労働力は1400万人であることから、新興国のグローバル人材を巡る争いが激化するのは間違いありません。このような状況の下では、日本企業はこれまでのように単純な労働力の確保にとどまらず、世界のトップクラスの優秀な人材の確保を考えていかなければなりません。
  そのために、近年急速にグローバル人事制度の導入をはかる企業が増加してきました。即ち、企業のカルチャーを維持しながら、グローバルな視点に立った人材の組織化や採用、育成、配置、交流といった施策を展開していこうというものです。教育界としても、これらの動きを注視し、世界に通用する人材の育成をに努めていかなければならないと思っています。

2012年01月26日

戦略の重要性~コダック社の経営破綻

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  今の時代の特徴を一口で言うと〝変化のスピードが速くて大きい〟ということですが、この変化の潮流をしっかりととらまえて、経営のかじ取りを行なっていかないと取り返しのつかないことになります。昨今の産業界を見ると、どの分野においても二極化が進んできており、かつて業界をリードしてきた名門と言われていた企業の経営破綻が度々報じられるようになってきました。
  先日、アメリカの映像機器大手のイーストマン・コダック社が日本の民事再生法にあたる米連邦破産法11条の適用をニューヨークの連邦地裁に申請したというニュースが飛び込んできました。同社は1880年の創業で、35ミリの「コダローム」を発売し、写真フィルムで一時代を風靡した企業です。その後、1975年には世界初のデジタル・カメラを開発しましたが、高収益のフィルム事業にこだわったため、市場の変化対応に遅れをとってしまいました。そして、2003年に本格化したデジタル・カメラの普及に事業構造の転換がついていくことができず、急速に経営が悪化してしまったのです。これと同様のことはレコード業界でも起こっています。このように、デジタル化技術の進歩は、従来の産業構造や業界秩序を一挙に覆すということになってきているのです。
  しかし、一方で富士フィルムは、医薬品や化粧品、液晶関連の新規事業を創出する等の多角化戦略をとり、脱フィルムを実現しています。このコダック社の例は圧倒的な強みを持つ事業はなかなか改革できないということではないかと思います。これは教育界においても同様であり〝強みが弱みになる〟ということをしっかりと学習し、経営戦略を構築していくことが重要であると感じています。

2012年01月22日

グローバル化の推進~③日本人の語学力

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  《IMD World Competitiveness Yearbook 2009》

  1月22日(日)、昨日は英語検定を実施しましたが、国際社会で活躍していくためにはコミュニケーション能力が不可欠であり、このツールとしての語学力が重要視されてきています。
  テレビのニュースで国際会議の場面が報道されますが、各国の首脳が母国語ではない英語を使いこなしているのに、日本人だけは通訳を介している姿が目に付きます。近年、グローバル化の進展に伴い、多くの企業では語学力に堪能な人材を求めていますが、企業が求めている語学力の到達度を国別に比較すると、日本は残念ながら最下位になっています。そして、これが海外でのビジネス展開面での大きなハンディになっています。
  日本では通常中学から英語の授業が始まり、大学まで10年間勉強しているというのに、大半の日本人は英語がうまく話すことができません。このことから、日本の学校における英語教育のあり方が論議されるようになり、近年は小学校から英語教育が行なわれるようになってきました。
  しかし、日本人が相対的に「英語下手」になるのは、母国語である日本語と英語との言語学的な距離が大きいということもあるようです。例えば、ゲルマン語系(オランダ語・デンマーク語・スウェーデン語・ドイツ語など)やロマンス語系(フランス語・イタリア語・スペイン語など)の言語は日本語より遥かに英語との共通点が多い言語であると考えられています。従って、英語の習得にはそれほど苦労を要しませんが、英語と共通点の少ない日本語を使う日本人にとっては多大の努力を要することになるのです。逆に、これらの言語を使用する人達にとって、日本語の習得は難しいということになります。
  一例をあげると、アメリカ人国務省研修生が色々な語学の習得に要した時間数を調査したデータがあります。これによるとフランス語・ドイツ語・スペイン語などの外国語における日常生活に支障のないスピーキング能力を習得するのに約720時間かかったのに対して、日本語・中国語・朝鮮語・アラビア語などの4つの言語で同等の能力を習得するには、約2400 ~ 2760時間の集中的な特訓が必要であったとのことです。
  私も幾度となく英語の習得にチャレンジしながら、壁を打ち破れずに今日に至っていますが、日本人にとっての英語力の習得は相当の努力が必要であるのは間違いがありません。単なる座学ではなく思い切って英語を使う環境に飛び込むということが必要なのかも知れません。

2012年01月05日

日本企業を取り巻く諸課題

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  今、輸出関連企業を中心に企業業績が悪化してきており、懸命な努力を続けているにも関わらず本格回復には程遠い状況です。これまで日本の経済界は経営環境の悪さを「5重苦」と呼んで、政府にその改善を求めていました。この5つは「円高」「世界一高い法人税率」「自由貿易協定(FTA)、TPPの立ち遅れ」 「製造業の派遣労働禁止」「温室効果ガス排出量の25%削減」です。これに東日本大震災後における「電力不足」が加わり、現在は「6重苦」という状況になっています。
  とりわけ、ゆきすぎた円高の結果、企業の売上げと利益は大幅な下方修正を余儀なくされています。現在、自動車や電機メーカーは韓国企業と激しい競争を展開していますが、現代自動車やサムソンはウォン安を背景に着々と占有率を伸ばしてきています。例えば、トヨタでは1円の円高による利益への影響は340億円減、本田や日産では200億円減という金額になります。また、法人税も日本が約40%であるのに対して、韓国が24.2%と大きな差になっています。更に、自由貿易協定の遅れによって、日本企業は関税面でも大きなハンディキャップを負っています。
  しっかりと認識しておかなくてはならないのは、これまで日本企業が差別化のカギにしてきた品質と機能は、ほぼ市場の要求水準に達してしまったということです。この結果、同じ品質・機能でより低価格なものに目が向き始めてきています。言い換えるとコスト力がより重要になってきており、あらゆる部分で高コスト体質にある日本企業が国際競争力を保つのは難しくなってきているのです。そして、これまでの5重苦と今回の電力不足とは抜本的な違いがあります。つまり、「5重苦」の場合は企業の利益を圧迫するものであるのに対して「電力不足」は直接生産活動に結びつくものです。特に電力消費型の産業にとっては死活問題になります。このような状況下にあって、最近、日本企業は高コスト構造を抜け出し、電力不足に対応するために海外シフトの動きを加速し始めました。
  既にエルピーダ・メモリーが台湾に半導体工場、パナソニックがマレーシアに太陽電池工場、東レが韓国に炭素繊維工場、日産がメキシコに完成車工場等の建設を発表しています。
  また、EUにおける財政危機、新興国における景気の減速リスク等からも目が離せません。企業努力も限界に達しつつある中で、政権争いに明け暮れている時間的な余裕はないと思っています。

2012年01月04日

先送りできない日本

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  日本は今、歴史の分水嶺という大きな変化に直面しています。このような状況に陥った理由を一口で表現すると日本としての国家戦略の欠如です。 66年前、日本は第2次世界大戦の敗戦により、全土が焼野が原になり、まさにゼロからのスタートでした。その後、全国民が力を合わせて日本の復興をはかり、不死鳥のように蘇り、世界中から〝奇跡だ〟〝信じられない〟と言われるような経済発展を遂げました。しかし、東西の冷戦が終結し、経済のグローバル化が急速に進展する中で、これまでの成功体験が忘れられず、思い切った手を打つことができなかったため、世界の中での地位が下がり続けています。そして、デフレと円高によって企業の利益が減少し、税収が増えないという状況が続いています。
  一方で日本の人口は2005年をピークにして減少に転じており、高齢化率は世界一となり5人に1人は65歳以上ということになっています。そして、この傾向は益々進み2050年には3人に1人になります。同時に生産年齢人口(15歳~64歳)が減少することになり、これらの人の負担が増加することになってきます。人口構成や出生率を見れば、このような社会が到来することは20年以上も前から予想されていたことです。つまり、団塊の世代が一気に引退する時には社会保障にかかる予算は膨大なものになり、現行の制度が続く限り、社会保障費は毎年1兆円増加していくという事実です。この他にもさまざまなバラマキ政策によって国の借金は1000兆円になろうとしています。そして税収を上回る国債の発行を余儀なくされているのです。
  今、ギリシャやイタリアやポルトガルの国家財政が深刻な状況に陥っていますが、GDPに対する借金の比率という点では日本がずば抜けて高いのです。にもかかわらず、日本がこれらの国よりも大きな問題にならないのは、膨大な個人資産によって日本国債が消化されているからです。しかし、徐々に貯蓄率が低下し、個人資産が減少しつつあることを見ると、早晩日本の借金が個人資産を上回ることになってしまいます。現在、国債の金利支払いだけでも10兆円近いお金が必要になってきています。
  家計に例えると、収入が少ないのに借金をして贅沢な暮らしをしているということです。徹底して支出を減らし収入を増やしていかなければ、日本がやがて破綻するのは目に見えています。〝自分さえ良ければ他の人はどうなってもかまわない〟〝自分が生きているうちは何とかなるだろう〟といった考え方は避けなければなりません。まさに、日本は先送りできない待ったなしの状況になっているのです。選挙での票の獲得を目的としたバラマキをなくし、徹底して無駄を削減する。そして、一人ひとりが危機感を持ち、真面目に働いて税収を増やし、後世に負の遺産を引き継がないという強い決意が必要であると思っています。
  なお、ジャーナリストの池上彰氏の著書『先送りできない日本』には日本の現状が分かりやすく解説されていますので、是非ご一読ください。
  

2011年12月16日

グローバル化の進展~②マネジメント層の国際経験 

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  現在、日本企業のグローバル化が遅れている理由のひとつは、人材のグローバル化が遅れているということをお伝えしましたが、日本は世界の国の中でもマネジメント層の国際経験が極めて浅いということがあげられます。言い換えると、グローバルな視点を持ったマネージャーが少ないため、どうしても日本を中心に経営を考える傾向が強くなってしまうことになります。
  グローバル人材にはさまざまな要件がありますが、世界のどこでも仕事ができること、色々な企業で通用する専門能力やマネジメント力を有していること、異なる環境下における課題発見・解決力等があげられます。日本では、海外で活躍できる要件として、語学力だけが重要視されがちですが、語学というのは自分の考えを相手に伝えていくコミュニケーションのツールであり、語学力さえあれば海外で活躍することができると思うのは間違いです。
  しかし、残念なことにコミュニケーションのツールである語学力が極端に低いため、企業のグローバル化のニーズに応えられないというのが現実です。これからは社会人になる前に語学力のレベルを高めると共に専門知識や技能を修得しておくことが非常に大切になってくると思っています。

2011年12月15日

世界のエネルギー需要の動向

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  グローバル化の進展に伴い、近年新興国が急速な経済発展を遂げるようになってきました。この結果、世界のエネルギー需要は年々増加してきていますが、それぞれの国にとってどのようにしてエネルギーを確保していくかが大きな課題になってきています。エネルギーは食料と水と共に生活に欠かせないものであるだけに、この確保は重要な国家戦略になっています。これまで、世界各国は石油や石炭や天然ガスといった化石燃料を中心としたエネルギーの確保を図ってきましたが、これらの資源は有限であり、いずれ枯渇することは目に見えています。また、燃焼に伴い温暖化ガスが発生するため、環境への影響も考慮していかなければなりません。最近、南極や北極の氷が溶け出していることが確認されており、これが海面の上昇につながり、ツバル等は国土が水没する恐れが出てきています。また、海水温の上昇により、世界のいたるところで珊瑚の白化現象が発生し、魚達の生息する場所が次々と失われてきています。
  近年、わが国でも温暖化ガスの抑制をはかるため、原子力発電にシフトする動きが加速され、最終的には発電量の50%を原子力で賄う計画を立てていましたが、東日本大震災によって、エネルギー政策は大きく見直されることになりました。そして、再生可能エネルギーに注目が集まり始めていますが、原子力の代替という位置づけになるためには相当の時間がかかることになりそうです。
これからのエネルギーの動向について注視していきたいものです。

2011年12月14日

グローバル化の進展~①人

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  東西冷戦後、情報化と相まって世界経済のグローバル化が物凄い勢いで加速し、これからも益々進展することが予想されます。グローブというのが〝地球〟ということですから、グローバル化というのは人、物、金、情報、技術等が国境を超えて〝地球規模で動く〟とことを意味します。
  日本は少子高齢化による国内需要が増えないことに加えてグローバル化の波に乗り遅れたために、経済が低迷するという状況が続いており、失われた20年と言われています。
  グローバル化を推進するための最重要課題は〝人材(財)〟であり、単純作業をこなす労働者ではありません。これまで、日本企業はモノ、金、情報、技術については、かなりグローバル化を進めてきましたが、グローバル人材の確保と育成には遅れをとってしまいました。これが、現在新興国でのビジネス展開をはかるためのネックになっているのです。
  しかし、ここ数年、ようやく語学研修の充実、英語による社内会議の開催、社員の海外派遣や長期勤務、外国人の採用、グローバル人事制度の導入等の取り組みを強化し始めました。この動きは今後一層加速されることになるのは間違いありません。
  将来、生徒達の中には、さまざまな企業で勤務する人が多いと思いますが、企業の採用は〝グローバル人材として活躍できるかどうか〟という視点が重視されることになります。つまり、日本人だけではなくさまざまな国の人と同じ土俵で選考されることになってくるのです。
  これから、企業におけるグローバル化の動きについても紹介していきたいと思っています。

 

2011年12月13日

世界経済の動き

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      《 PIGS 》                 《G7》 

  先日の入試説明会で説明した「世界や日本の現状」「新しい技術」「企業の動向」等について、これから詳しく掲載していきたいと思います。
  これまでの世界経済はG7と言われる国を中心に動いてきました。このG7というのは、ヨーロッパのイギリス・フランス・ドイツ・イタリアの4国とアメリカ・カナダと日本の7ヵ国(1998年以降はロシアが加わりG8)で、先進国首脳会議が開かれ、世界経済の課題を克服してきました。しかし、新興国の急速な経済発展と先進国の経済の低迷によって、先進諸国だけでは世界経済をコントロールすることができなくなってきたのです。特にBRICsと呼ばれる中国・インド・ブラジル・ロシアのGDP(国内総生産)は世界の約4分の1を占めるまでになってきました。そのため、近年はこの4国に加えて、南アフリカを加えたBRICS(sを大文字のSに変更)の5国やG20の国々による会議が開催されるようになってきました。
  また、最近の世界経済はいたるところで綻び(ほころび)が生じてきています。その最大のものはEUにおける財政・金融問題です。現在、統一通貨であるユーロを使用している国は17に及んでいますが、これらの中で、ギリシャ危機がポルトガル、イタリア、スペインにまで波及し始めています。とりわけ、GDPが大きく、G7の一角を占めるイタリアの国家財政が破綻すると、イタリア国債を大量に保有するドイツやフランスをはじめ世界各国の金融機関が深刻な状況に陥ることになります。
  更に、これまで一極集中と言われたアメリカ経済も、リーマンショック以降本格回復とは言えない状況が続いています。日本経済も総需要の頭打ちに加え、急激な円高の影響で輸出産業を中心に経営が悪化しており、国の経済も依然として低成長が続いています。
  この結果、新興国の経済にも悪影響が出始めており、輸出の不振や外国資本の引き上げ等により、相次いで成長率の下方修正が発表されています。そして、これらの国に石炭や鉄鉱石を提供していた資源国にも翳りが見られるようになって来ました。このように、グローバル化が進んだ結果、単に一つの国にとどまらず、世界の様々な地域に波及することになり、経済が変調をきたすことになるのです。
 

2011年10月24日

世界多極化の中の日本

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   これまで何回かにわたって、世界が多極化してきているということに触れましたが、これはアメリカ・ヨーロッパ・日本を中心とした三極体制やアメリカの一極集中体制が徐々に移行するというようなものではなく、急激に世界の枠組みが変わリ、全く新しい経済社会が生まれてくることを意味しています。このような環境の変化の下では、これまでの成功体験は全く参考にならないばかりか、かえって経営判断を誤らせることになるかもしれません。この新しい枠組みの中で、考えておかなければならないのは、今までとは全く異なる市場が生まれるということです。
  これから発展してくるのは途上国ですが、これらの国における一人あたりの所得水準は先進国に比べると高くはありません。そのため、これまで先進諸国で受け入れられてきた製品やサービスがそのまま受け入れられることはありません。しかし、膨大な人口を有しているため、マーケットの規模としては極めて大きいのです。
  最近、新聞紙上でもB.O.Pという言葉が目につくようになってきましたが、これは世界の所得別人口構成の中で、最も収入が低い所得層を指すもので、Base Of the Pyramid の略です。かつてはBottomという単語が使われていましたが、差別的な意味もあるということで、Baseということになりました。そして、現在地球上の約40億人がこの層に該当しており、市場規模は実に約5兆ドル(約400兆円)にも上ると言われています。また、このうちの30億人がアジアに居住しています。言い換えるとアジアの人口の80%がBOP層であり、これからますますアジア市場が注目されてきます。
  そして、企業にとっては利益を追求しつつ、低所得者層の生活水準の向上に貢献できるというビジネスモデル」が求められるため、現地でのさまざまな社会課題の解決をはかるという基本的な姿勢が不可欠です。日本企業はグローバル化への対応が不十分であると言われていますが、この要因の一つが途上国に対するビジネスの遅れなのです。近年になって、ようやく多くの日本企業がグローバル化に向けて、経営の舵を切り始めています。これから、これらの企業活動の事例を取り上げていきたいと思っています。
 

2011年10月16日

新興国における新たなビジネス・モデル

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  グローバル化の進展に伴い、新興国における消費が爆発的に伸びることになり、新しい市場が次々と誕生してきています。これらの市場は、先進国におけるものとは全く異なる特色を持っているため、先進国での成功モデルは全く通用しないということになります。 これまでの多くの日本企業は、主に先進国に焦点をあてて経営活動を展開してきました。このため、製品についても同一機種を世界の先進諸国で同時発売するというやり方をとってきました。そして、新興国においては、一部の富裕層に限定して製品の供給を行なってきました。つまり、一般大衆については販売対象として考えていなかったということです。分かりやすいように自動車や電気製品を例に挙げると、インドで最も売れている自動車は20万円台、エアコンや冷蔵庫は2万円というように日本の10分の1の価格です。この価格を実現するためには、現在、日本国内で開発・製造・販売している方法では不可能です。材料費、人件費等のコストを一から見直していかなければなりません。そして、新たなビジネス・モデルを作り出していくことが必要になってきます。この結果、経営資源であるヒト・モノ・カネの流れに大きな変化が起こってきます。この中でも、学校教育にとって、とりわけ関係深いのは国籍を超えた「優秀な人材の獲得競争」が起こってくるということです。これからグローバル社会で活躍できる人材の育成をはかっていきたいものです。

2011年10月09日

多極化する世界~BRICsに続くVISTA

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  19世紀から20世紀初頭にかけては、世界は完全に欧米の2極を中心に動いていました。そして、第二次世界大戦後には世界の奇跡と言われる復興を遂げた日本を加え、世界は日米欧3極へと移行し、先進7ヵ国(G7)と言われるアメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・カナダ・日本が世界をリードし、政治経済面での安定をはかってきたのです。この中でも超大国アメリカの力は絶大で、長い間「アメリカ一極集中」とさえ言われてきました。しかし、同時多発テロやイラク戦争等でアメリカの存在感は低下し、BRICsと言われるブラジル・ロシア・インド・中国が経済的に大きな影響力を持つことになりました。とりわけ、中国の経済成長は目覚しく、ついに日本を抜いてGDP(国内総生産)世界第2の経済大国に躍進することになりました。また、世界第2位の人口保有国であるインドも急速に発展を遂げつつあります。
  更に、今、世界では更に大きな変化が起りつつあります。それはBRICsに続く新興国の台頭です。この代表格がVISTAと言われるベトナム・インドネシア・南アフリカ(サウス・アフリカ)・トルコ(ターキー)・アルゼンチンです。やがて、これらエマージングカントリー(新興国)が世界のGDPの過半を占めるようになってきます。このように、これからの半世紀は急速に世界多極化の時代に向っていくことになります。
  現在、日本社会は少子高齢化に伴う労働人口の減少や需要の低迷、社会保障費の増大等大きな転機を迎えていますが、世界の中で起きている大きな潮流をしっかりととらえておかなければならないと思っています。

2011年10月04日

環境対応車の開発

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  前述したように、19世紀の後半には、蒸気自動車、電気自動車、ガソリン自動車が完成度を高めていましたが、機構上の問題と油田の開発によってガソリン車に集約されるようになりました。しかし、安価な石油とガソリン車の普及によって、地球温暖化という環境問題を発生させることになりました。現在の状況が予測されていたなら別の動きになっていたかも知れません。
今、世界各国の自動車メーカーは環境対応車の開発にしのぎを削っており、政府も普及に対する助成を行なっています。これらは「低公害車」や「エコカー」とも呼ばれ、従来のガソリン車やディーゼル車に比べて、排気ガスによる大気汚染物質(窒素酸化物や硫黄酸化物等)や地球温暖化物質(二酸化炭素等)などの排出が少ないのです。この環境対応車にはさまざまな種類があり、代表的なものとしてはガソリンエンジンと電動モーターの二つの動力を効率良く切り換えて走る「ハイブリット自動車」やバッテリーからの電気でモーターを動かして走る「電気自動車」、天然ガスを燃料にした「天然ガス自動車」、メタノールを燃料にした「メタノール自動車」がありますが、これらに加えて「低燃費・低排出ガス認定車」も含まれています。
  課題は、走行性能の向上、価格の低下、エネルギー充填スタンドの整備等ですが、将来的には自動車のほとんどが環境対応車に置き換わっていくのは間違いないと思います。

2011年10月03日

自動車の歴史

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  自動車の世界生産は平成19年(2007年)には5400万台規模まで拡大しましたが、リーマンショック等の影響で先進国を中心に、現在は減少してきています。しかし、今後は途上国を中心に需要が拡大し、2020年には7200万台規模になるのではないかと予測されています。自動車産業は裾野が広いため、これからも注目すべき産業になるのは間違いありませんので、これから自動車について何回かにわたって取り上げてみたいと思います。
自動車の歴史を紐解くと、1886年に、ドイツのダイムラーとベンツにより現在のガソリンエンジンとほぼ同じものが開発されたのを皮切りに、フランス、イギリス、アメリカなどでも今日に通じるガソリンエンジンの車の生産が始まりました。当時は電気自動車や蒸気自動車も完成度を高め、いずれも相当な台数が街を走っていましたが、蒸気自動車と電気自動車はともに機構上の問題があることと前述したように、1901年の「テキサス油田」が発見されたことにより、ガソリンエンジンの普及に拍車がかかることになりました。この結果、自動車工業の舞台から次第に姿を消していくことになったのです。実は発明王のエジソンも電気自動車の改良に注力していたと言われています。
とりわけ、アメリカのヘンリー・フォードフォードは流れ作業が可能な「ベルトコンベアによる組立ライン」を導入することによって、自動車を大量生産し販売価格を下げることに成功しました。これによって、一部の富裕層の所有物であった自動車が大衆化されることになり、自動車産業は巨大なものになりました。そして、年間の生産台数は1920年までに100万台を突破し、アメリカの自動車の半数はT型フォードとなったのです。
  日本では1930年代にトヨタが最初に自動車の開発を手がけることになりましたが、今日の地位を築き上げるまでには血の滲むような努力と紆余曲折があったのです。
                                          《続く》

2011年10月02日

石油の歴史

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  石油の歴史を紐解くと、17世紀にルーマニアで灯油として使われていたという記録が残っています。その後、アメリカのペンシルベニア州やテキサス州において大油田が発見され、石油の商業化が始まり、それまで使われていたランプの燃料である植物油に代わる便利な燃料(灯油)としての需要が急速に増えていきました。
  石油というエネルギーを語る上で、切っても切れないのが発明王と言われたエジソンとの関係です。エジソンは電気を使用してさまざまな製品開発を行なっており、1879年に電球(白熱灯)を発明しました。この結果、照明は灯油ランプから電気へと置き換わっていくことになり、石油企業としては市場の多くを失う恐れが出てきたのです。
  ところが、1885年にドイツでゴッドリープ・ダイムラーとヴィルヘルム・マイバッハという技術者が、ガソリンエンジンを搭載したオートバイを開発し、その翌年には、カール・ベンツというドイツの技術者が三輪乗用車を作りました。これは、世界初のガソリンを搭載した自動車ですが、間もなくアメリカで「T型フォード」というガソリンを燃料とする自動車の大量生産・販売が始まりました。そして、自動車のエンジンは、石炭のように人が燃料をこまめに補給しなくても、燃料タンクへガソリンなどの燃料を一度入れてしまえば、一定の距離を走ることができるため、コンパクトな移動・輸送手段が欲しいというニーズに応えることになり、急速に石油の需要が増大することになりました。その後、石油を使った多くの技術が開発され、石炭から石油へとエネルギー転換が急速に進むことになりました。更に、1903年にはライト兄弟によって発明された飛行機の登場により、石油の消費がますます増大し、20世紀は石油を中心に工業化が進展することになったのです。

2011年09月23日

EU(欧州連合)の経済不安~PIGS

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  EU(欧州連合)には現在27カ国が加入しています。この変遷を見ると、1952年に西ドイツ、フランスなどの6か国がヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)を発足させ、次いで1958年にヨーロッパ経済共同体(EEC)を結成。更に、このEECは1967年に欧州共同体(EC)へと発展しました。その後、1991年にEU・ヨーロッパ連合を作ることが決まり、1993年にEUが正式に発足しました。そして、人・物・資本・情報が国境を越えて自由に往来できる政治・経済両面での統合を目指し、順次ヨーロッパ周辺の国を加えてきました。とりわけ2004年には旧東欧諸国のチェコ、スロバキア、エストニア、ハンガリー、リトアニア、ラトビア、スロベニアポーランド等10カ国が加わり、更に2007年にはブルガリア、ルーマニアが加わり、現在に至っています。
  そして、調印した国同士では、国境の出入りにパスポートの必要がなくなり、自由に移動ができるようになっており、2002年1月にはEUの共通通貨であるユーロが16カ国で導入されました。(イギリス、デンマーク、スウェーデンは等は未導入)
  ところが、これらの国々にあってはあまりにも経済規模や債務の状況が異なっています。そして、残念なことに近年財政危機が心配される国が出てきました。これらは大きな赤字を抱えるポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペインですが、この頭文字をとって『PIGS』という不名誉な呼び方をされています。また、この4国にアイルランドを含めて『PIIGS』という表現も使われています。
  これまで、アルゼンチンやロシア、韓国において財政危機が発生しましたが、これは国債の利回りが上がることによって、利払い負担が過大に増えるからです。これを乗り切るためにIMF(国際通貨基金)が超低金利での貸し出しを行ない、緊縮財政と為替相場の切り下げ、金融の引き締めに動いてきました。しかし、EUで財政危機に陥っている国はユーロという共通の通貨になっているため、通貨切り下げという切り札が使えないという状況にあります。これは急速な回復が期待できないということを意味しており、ドイツやフランス等支援を続けている国にとっては、厳しい世論が出始めているようです。
  グローバル化が進むと、一国の経済危機がドミノ倒しのように全世界に波及することになります。わが国の経済にも大きな影響が出る問題だけに、この動きをしっかりと注視しておきたいものです。

2011年09月22日

ギリシャに端を発する経済危機 

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  現在、世界経済は予断を許さない状況に陥っています。その最大のものはヨーロッパにおける経済危機とアメリカ経済の低迷です。このヨーロッパにおける経済危機の大きな原因はギリシャの財政問題です。つまり、ギリシャの借金が膨らみ過ぎて、返済不能になってしまう可能性が出てきているからです。分かりやすく言えば企業が倒産するのと同じように国が破綻するということです。
  実はEUにおいては〝国の年間の財政赤字をGDPの3パーセント以内にする〟という一定のルールが決められていました。ところが2009年にギリシャの政権が交代し、前政権が公表していた3.9パーセントという数字が実は12.8パーセントであるということが発覚してしまったのです。そして、現在は15.4パーセント、借金総額は33兆円にまで拡大してきていると言われています。国の借金(国債の発行額)が増えると、その返済や利子の支払額が増えて、最終的に返済できないことになります。これがデフォルトと言われるものです。
  それでは、どうしてアメリカや日本と比べて経済規模の小さいギリシャの財政悪化が世界経済に影響を与えるのかということですが、それはギリシャがEU(欧州連合)の一員であり、ユーロという共通の通貨を持っているからです。そして、ギリシャ国債を色々な国の政府や金融機関、とりわけドイツ・フランス等のEU加盟国がたくさん買っているため、デフォルトになれば、これらの国に多大な損失が発生することになります。特にスペインやポルトガルやイタリア等もかなり財政が苦しくなっていると言われているので、ギリシャが破綻すると、連鎖的にこれらの国が破綻する可能性が出てきます。つまり、企業の連鎖倒産ということが国レベルで起こるということです。これは以前のサブプライムローンと同じパターンです。そうなれば、日本やアメリカにも波及していくのは避けられません。
  現在、日本においても為替、株価、輸出等さまざまな影響が出てきています。この状況をしっかりと把握しておくと共にどうしてギリシャがこのような事態に陥るようになったのか、また膨大な国の借金を抱える日本は今後何をしなければいけないのかを考えていかなければならないと思っています。


2011年09月21日

国際商品の高騰

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  近年、日本はデフレ傾向にあり、工業製品をはじめ多くの物の価格が下がってきており、これが経済成長率の低下に繋がってきています。しかし、一方で国際商品の価格上昇が続いており、今年になって生活必需品の小麦や原油、嗜好品のコーヒー、トウモロコシ、大豆の価格が急騰しています。また、小麦や原油は2008年以来、コーヒーは実に14年ぶりの高値を付けました。この理由は「生産国の天候不順」「新興国の需要拡大」「主要国の金融緩和」等があげられます。
  とりわけ、小麦については政府が全量を調達し製粉会社への売り渡し価格を決めていますが、この1年で2割も上昇することになりました。この結果、製粉大手が業務用の小麦の価格を引き上げたため、製パン会社も7月から値上げに踏み切りました。そして、この動きはうどんや冷凍食品にも広がりつつあります。また、コーヒーについても主産地であるコロンビアの天候が不順であったことや最大産地であるブラジルが今年裏作にあたることで高騰しています。
  更に、石油は中国やインド等の新興国での需要増に加えて、紛争によるリビア産原油の輸出停止の影響で高値が続いています。現在、アメリカやヨーロッパや日本等の主要国の経済は予断を許さない状況下にあり、金融緩和の状態が続いています。つまり、お金がだぶついているのです。今後、これらの資金が投資マネーとして、商品市場に流入してくる可能性は否定できません。グローバル化が進む中で、様々な動きを注視しておくことが大切であると思っています。

2011年09月20日

世界の国々のGDPランキング

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  現在、その国の経済力を表わす指標としてGDPが使われています。これはGross Domestic Product の略で〝一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額〟を表わすもので、国内総生産と呼ばれています。以前はGNP(Gross National Product) という指標が使われていました。GNPというのは〝海外で働いている日本人も含めて日本人が生み出した価値の総額〟であるのに対して、GDPは〝国内で生み出された価値の総額〟であり、今は一般的にGDPが使われています。
  ところで、IMF(国際通貨基金)が発表した2010年の世界各国のGDPのランキングによると、中国が日本を抜いて世界第2位になり、日本は1968年(昭和43年)にドイツを抜いて以降、守り続けてきた世界第2の経済大国の地位を明け渡すということになりました。また、世界各国のGDPの10位までをあげると次の通りとなります。 
 1位アメリカ、2位中国、3位日本、4位ドイツ、5位フランス、6位イギリス、7位ブラジル、8位イタリア、9位カナダ、10位インド・・・・・ロシア、スペイン、オーストラリア、メキシコ、韓国・・・・・。これを見ると中国だけではなくブラジルが7位、インドが10位とBRICs諸国の躍進振りが目立っており、これからも大きな経済成長が期待されます。
  また、米ゴールドマンサックス社が公表した『2050年の世界国別GDPランキング予想』は全世界に大きな衝撃を与えることになりましたが、順位は現在と比べると大幅に入れ替わって、次の通りになっています。  
  1位中国、2位アメリカ、3位インド、4位ブラジル、5位メキシコ、6位ロシア、7位インドネシア、8位日本、9位イギリス、10位ドイツ・・・・・ナイジェリア、フランス、韓国、トルコ、ベトナム、カナダ・・・・・。この中では中国、アメリカ、インド3国のGDPが突出することになりますが、BRICsやVISTA等の途上国が大きな伸びを達成するのに対して、現在先進国と言われているG7のアメリカ、日本、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダの伸びは限定されています。
  40年後ということで、必ずしも予想通りになるとは限りませんが、このことをしっかりと理解しておくことが大切であると思っています。

2011年09月19日

超高齢化社会を乗り切る

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  本日(19日)は敬老の日ですが、65歳以上の老人が2980万人と過去最高になり、人口に占める割合は23.3%になりました。人口構成を表す言葉に、「高齢化社会」「高齢社会」「超高齢社会」というものがありますが、高齢者(65歳以上)の人口が総人口に占める割合が7%以上の社会を高齢化社会(aging society)、14%以上になると高齢社会(aged society)、21%以上に達すると超高齢社会(super-aged society)と呼ばれています。
  日本は平均寿命、高齢者数、高齢化のスピードという三点において、世界一の高齢化が進展している国です。つまり、出生数が減る一方で、平均寿命が延びて高齢者が増えているからです。
  『高齢社会白書』の「世界の高齢化率の推移」の中には〝欧米諸国は50~100年間で高齢化社会から高齢社会へと移行したのに対し、日本では1970年(7.1%)から1995年(14.5%)と25年間で高齢社会に移行し、さらに2007年(21.5%)には高齢者が21%を超える超高齢社会となった。〟ことが取り上げられています。因みにこの高齢化社会から高齢社会に移行するまでの年数を見ると、フランス115年、スウェーデン85年、ドイツ40年、イギリス47年に対して、日本はわずか24年です。そして、これから第1次ベビーブームの(昭和22 - 24年)生まれの人達が高齢者の仲間入りをする15年には3000万人を超えることになります。
  日本では現在、5人に1人が高齢者、9人に1人が75歳以上という「本格的な高齢社会」になっており、このままの状況が続くと、2055年には高齢化率は40%になると予想されています。このように現在日本の高齢化は急速に進展しており、これに伴って年金、医療、介護等社会保障給付が増大してきており、国民所得に占める社会保障費の比率は実に3割を超えています。これは欧州における高福祉国家に匹敵する数字ですが、国民負担率は低水準にとどまっています。そして、このままでは自然増が発生することになり、国債の発行で財源不足を穴埋めすることは不可能になります。日本の年金や医療等の制度のベースは平均寿命が50歳台で人口が増加するという時代に構築されたものですが、これから人口が減少する局面においては財政面で大きな負担になっており、制度の再設計が不可欠な状況になっているのです。これらの現状を正しく理解することにより、後の世代にツケをまわすことのないようにしていかなければならないと思っています。

2011年09月18日

グローバル化と空洞化

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  毎年、IMD(経営開発国際研究所)から発表される世界各国の競争力比較は「経済状況」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「社会基礎」の4分野での約300にわたる細かい評価項目から成り立っています。2010年の国際競争力の1位はこれまでのアメリカを抜いてシンガポール、2位は前年と同様香港、3位はアメリカとなっていますが、特に注目すべきは台湾、中国、韓国等のアジアの国々がランクを上げている中で、日本だけが大きく順位を下げていることです。この理由は「経済状況」が大幅に低下し、「政府の効率性」では膨張し続ける財政赤字が評価の足を引っ張っているからです。
  これまで日本は経済一流、政治三流と言われてきましたが、近年経済にも翳りが出始めてきました。特に日本の法人税の高さは58カ国・地域でトップ、外国人労働者や外国企業の受け入れ態勢は不十分、製造業への派遣に対する制限、高い電力料金、関税障壁等の問題があり、企業は他国に比べて大きなハンディキャップを背負っているのです。これらが企業の国際競争力を低下させるため、国際企業は生き残りをかけて軸足を日本から海外に移す動きを加速してきています。これが〝空洞化〟と言われる現象であり、雇用情勢が一段と厳しくなるのは避けられません。今、弱者を救済するということで多くの税金が使われていますが、空洞化が進むと法人所得も個人の所得も減少することになります。この結果、税収が減り、国の財政は一層悪化することに繋がるのです。日本を再建するためには依存体質からの脱却が不可欠であるということをしっかりと認識しておかなければならないと思っています。

グローバル化と空洞化

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  毎年、IMD(経営開発国際研究所)から発表される世界各国の競争力比較は「経済状況」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「社会基礎」の4分野での約300にわたる細かい評価項目から成り立っています。2010年の国際競争力の1位はこれまでのアメリカを抜いてシンガポール、2位は前年と同様香港、3位はアメリカとなっていますが、特に注目すべきは台湾、中国、韓国等のアジアの国々がランクを上げている中で、日本だけが大きく順位を下げていることです。この理由は「経済状況」が大幅に低下し、「政府の効率性」では膨張し続ける財政赤字が評価の足を引っ張っているからです。
  これまで日本は経済一流、政治三流と言われてきましたが、近年経済にも翳りが出始めてきました。特に日本の法人税の高さは58カ国・地域でトップ、外国人労働者や外国企業の受け入れ態勢は不十分、製造業への派遣に対する制限、高い電力料金、関税障壁等の問題があり、企業は他国に比べて大きなハンディキャップを背負っているのです。これらが企業の国際競争力を低下させるため、国際企業は生き残りをかけて軸足を日本から海外に移す動きを加速してきています。これが〝空洞化〟と言われる現象であり、雇用情勢が一段と厳しくなるのは避けられません。今、弱者を救済するということで多くの税金が使われていますが、空洞化が進むと法人所得も個人の所得も減少することになります。この結果、税収が減り、国の財政は一層悪化することに繋がるのです。日本を再建するためには依存体質からの脱却が不可欠であるということをしっかりと認識しておかなければならないと思っています。

2011年09月17日

グローバル化の中の日本

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  日本はグローバル化の波に乗り遅れたため、国際競争力がこの20年間で急落してきています。毎年、IMD(スイスの有力ビジネススクールである経営開発国際研究所)が世界の国々の競争力を発表していますが、『2010年の世界競争力』によると、日本の総合順位は58カ国・地域で27位となっており、前年の17位から急落しました。この調査が始まった1989年から93年までの5年間、日本がトップであったことを考えると、「失われた20年」という表現がピッタリすると思います。
  実は1989年というのは実にエポックメイキングな出来事が重なった年なのです。日本では1月に昭和天皇が崩御され、年号が平成に変わりました。また、中国では6月に天安門事件が起こりました。更に11月にドイツのベルリンの壁が崩壊したのです。このベルリンの壁の崩壊という史実は単に東西ドイツの統一といったことだけではなく、東西冷戦が終結したということを意味しています。そして、世界全体の枠組みが変わり、経済のグローバル化が一挙に加速されることになったのです。
  分かりやすく言えば、東西冷戦時代には鎖国状態であった旧東側諸国や中国等が世界経済の一員となることで、国際的に人件費が急激に下がることになりました。これまでは西側諸国だけで行なわれていた経済活動の範囲が大幅に広がることになったのです。そして、安い人件費の国に工場を建設することによって、安価に物づくりができるようになってきました。現在は中国やインド、ブラジル、ロシアといったBRICSをはじめ、旧東欧諸国、東南アジア諸国等にも先進国の工場が次々と進出しています。そして、更に安価な労働力を求めて、工場建設が行われるようになってきています。今後、この流れはますます加速され、国際的な製造コストは下がり続けていくことになります。更に、発展途上国が急速に力をつけてきており、経済の多極化が進展してきています。こういう状況下で、本年3月に東日本大震災が発生しました。このままでは日本の国際競争力は更に低下することになります。まさに、今、日本は正念場を迎えています。お互いの足を引っ張るような内輪もめをしている場合ではありません。国民一人ひとりが日本のおかれている現実をしっかりと見つめていかなければならないと思っています。

2011年05月07日

日本における電力事情を知る

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  東京電力福島原子力発電所の事故が起きて、間もなく2カ月が経過しようとしていますが、なお予断を許さない状況が続いています。原子力発電に対する安全神話が崩れてしまった今、日本のエネルギー政策については抜本的な見直しが必要になってきました。この度、最も危険度の高いと言われている中部電力・浜岡原発の全停止の方針が打ち出されましたが、このような局所的な対応では解決には至りません。
  大震災以降、原子力発電は危険だから即刻廃止すべきであるという声が高まってきていますが、これによって代替エネルギーが容易に確保できるかというと答えは「否」です。これまで、日本においては夏場における電力不足の懸念はあったものの、基本的には電力は安定的に供給されるという前提で、国民生活が成り立ってきました。私達の家庭においても、エアコン、冷蔵庫、テレビ、照明器具、調理器具等数多くの電気製品の使用は当たり前になっていますし、24時間営業のコンビニ、いたるところにある自動販売機、電車などの交通機関、スポーツや娯楽施設等、生活が豊かになるにつれて電力使用量が増大してきました。また、日本経済を支える産業分野においては、電力の供給は不可欠であり、特に大型設備を有するメーカーにあっては安定的な電力供給がなければ、たちまち生産に支障をきたすことになります。
  仮に、電力が不足するということになれば、多くの分野でさまざまな支障が生じてくるのは間違いありません。現在、発展途上国では停電することは珍しくありませんし、日本でも以前はよく停電が起き、各家庭には大きなローソクや懐中電灯が常備されていました。しかし、最近では停電するということはほとんどなくなってきました。これは増大する電力需要に対して、電力各社が積極的に発電所の建設を進めてきたからです。そして、地球温暖化防止のためのCO2削減という課題をクリアするために、政府として原子力発電所の建設をエネルギー政策の柱として進めてきたのです。
  今回の原発事故を契機に、現在の日本における電力事情をしっかりと理解した上で、今後の電力のあり方について考えていくことが大切であると思っています。

2011年02月23日

全校朝礼~バナナ哲学

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  2月23日(水)、校庭で中学・高校合同の全校朝礼を行ない、次のような話をしました。

  〝高校3年生が卒業し、間もなく高校2年生は最上級生に、高校1年生は2年に、中学3年生は高校生に、中学2年生と1年生はそれぞれ進級します。この1年をしっかりと振り返り、新しい年度に備えてください。

  さて、この一年間、全校朝礼で中学の皆さんには「環境」、高校の皆さんには「グローバル化」というテーマでお話をしてきました。グローバルというのは地球という意味ですから、グローバル化というのは地球規模で色々なことが起こってくるということです。今日は中学・高校合同ということなので、環境とグローバルの二つに関係した話をします。
  現在世界の人口は69億人になり、この100年少しの間に約4倍になりました。世界で一番人口の多い国は中国、二番目はインド、三番目はアメリカですが、四番目はどこか分かりますか。正解はインドネシアです。今日はこのインドネシアについてお話します。現在のインドネシアの人口は2億3千万人で日本の約2倍、国土面積は約5倍で約1万8000の島があります。そして、東の端から西の端までの距離はアメリカ合衆国の東海岸から西海岸までとほぼ同じです。
  私は以前この国で生活したことがありますが、赤道直下にあるため、とにかく暑い。朝から太陽が照りつけると、すぐに人間の体温くらいになります。ほとんどの人がイスラム教徒で豚肉を食べませんし、ラマダンという断食月があり太陽が上がっている間食べ物は一切口にしないという習慣があります。そのため仕事の能率が極端に落ちてしまいます。何よりもお祈りを大切にするため、会議をしていてもお祈りの時間になると一人抜け、二人抜けということになって、気がつくと日本人だけが残っていたということになります。このように宗教の影響が強く、会社の中にもモスク(礼拝堂)があります。
  そして、水が大変貴重で、生水を飲むとたちまち下痢をします。日本では「湯水のように使う」という言葉がありますが、これは無駄遣いをするという意味です。同じ言葉がイスラムの世界にあるのですが、この意味は全く異なり、大切に使うという意味になります。松下電器では何のために企業活動を行なうのかを明確にしています。これによると企業の使命は「安価な製品を大量に世の中に提供することによって人々に快適な暮らしをしてもらうことである。貧しい人がよその人の食べ物をとると罰せられるが、黙って水道の水を飲んでもとがめられることはない。従って水道水のように安い製品を作り社会生活を向上させる。」というもので『水道哲学』と呼ばれていました。この水道哲学の考え方を現地の従業員に伝えていかなければなりませんが、インドネシアではこの話は通用しません。そこで、考えた挙句、『バナナ哲学』ということにしたのです。バナナの木は一年生草で、一年で実をつけます。家に二本植えておくと一本は自分達の生活のために、残りの一本は売って生活の糧にできます。このようにして、従業員に会社の考え方を教えていったのです。
  皆さんはインドネシアについてどのようなことを知っていますか?観光地であるバリ島、スマトラ沖地震、スカルノ大統領とデビ夫人、オランウータン等が思い浮かぶのではないかと思います。
  今、インドネシアは人口が多く今後も増え続けていくこと、天然ガスや石油、ゴム、植物性のココナツ油脂等の豊富な資源に恵まれていることで注目されています。しかし、国力を表すGDPはまだ日本の10分の1の規模しかなく、今後大きな経済発展が見込まれています。そして、このインドネシアに適した商品が開発されてきていますが、どういうものなのか考えてみてください。次の朝礼でお話します。〟

2011年02月16日

高校全校朝礼~血の滲む努力で需要を創る

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  2月16日(水)、高校3年生にとっては最後となる高校の全校朝礼で次のような話をしました。
  〝皆さんの中には将来企業に就職する人が圧倒的に多いと思います。産業界においては、建設、農林・水産、食品、化学、医薬品、鉄・非鉄、電機、機械、自動車、小売、金融、情報、運輸、サービス等の業種があり、さまざまな企業がそれぞれ工夫を凝らしながら活動を行なっています。
 メーカーを例にとれば「新製品の開発」「物づくり」「販売」「材料の購入」「在庫管理」「資金管理」等があります。この一つ一つの成否が企業の業績に反映されることになります。これからグローバル化が進む中で、色々な企業が取り組んできて実践例を研究することは非常に参考になると思いますので、これから折に触れて紹介していきたいと思っています。
  メーカーにとって販売を増やすということは経営上何よりも大切ですが、今日はチョコレートメーカーの取り組みについてお話します。物の販売には「お客様が必要としている商品を提供する」というものと「新たな需要を創造する」というものがあります。このうち、バレンタインデーにおける販売キャンペーンは後者です。
  バレンタインデーにチョコレートを贈るという最初のイベントは、1958年(昭和33年)に行なわれました。これを企画したのは森永製菓や明治製菓といった大手メーカーではありません。本学園と同じ1950年(昭和25年)に創立されたメリーチョコレートという会社です。このイベントは営業主任であった原邦生氏(創業者の息子で後に社長に就任)によって開催されました。同氏はヨーロッパにいる知人から聖バレンタインの話を聞き、早速新宿の伊勢丹デパートでキャンペーンセールを行ないました。しかし、3日間で売れたのは、わずか30円の板チョコ5枚と4円のカード5枚の計170円だったそうです。それでも諦めずに、翌年にはハート型のチョコレートを作り「女性から男性へ」という文句を添えて売り出す等の新たな試みを行ないました。
  続いて1960年(昭和34年)には森永製菓がバレンタイン企画を新聞広告として掲載しました。このような挑戦を続けることによって1975年(昭和50年)代になって、やっとイベントとして定着したのです。その後、職場の上司や同僚に対して贈る〝義理チョコ〟やバレンタインのお返しとなるホワイトデーのあり方等についても話題になりました。このような努力によって、今ではバレンタイン関連での販売は年間の12%~15%にもなっています。そして、既に紹介したように、最近では友達に贈る〝友チョコ〟や男性から女性に贈る〝逆チョコ〟が増えてきており、メーカー各社はこの流れに沿った仕掛けを次々と行なってきています。
  現在、日本では色々な物の販売が伸び悩んでいますが、このように企業は何とか需要を拡大しようと血の滲むような努力を傾注しています。今日は海外での文化を日本流に焼き直した例を紹介しましたが、これからのグローバル社会においては、他の国で流行しているものを日本に取り入れる、また日本でやっているものを海外に展開するということが頻繁に起こってきます。そして、近年は先進諸国が新興国を中心としたマーケットに切り込もうとしています。まさにこれからは知恵を絞り出し、果敢に挑戦することが大切な時代になってきているのです。皆さんはこれからグローバル社会の中で大いに活躍して欲しいと思います。〟

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2011年02月02日

グローバル社会を生き抜く~日本の伝統と文化を知る

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  2月2日 (水)、学園講堂で高校生対象の全校朝礼を行ない、次のような話をしました。
〝この朝礼ではこれまで「グローバル化」というテーマでさまざまな話をしてきました。皆さんはこれから好むと好まざるにかかわらず、グローバル社会の中で生活していかなければならなくなります。今、世界で起こっていることを取り上げるとオーストラリアやブラジルでの大洪水や各地での天候不順、エジプトでの暴動、ロシアでのテロ等です。この結果、株価が下落したり、鉄の値段が上がったり、農作物の値段が上がる等さまざまな影響が出てきます。これから皆さんは宗教や生活習慣、ものの考え方の異なる人達と一緒に仕事をしたり、生活していかなければなりません。その時に大切なことは相手の立場を理解するということですが、もうひとつは日本という国や日本人の良さを伝えていくことなのです。そのためには日本の歴史や伝統や文化をしっかりと勉強しておかなければなりません。これからこの朝礼でもこれらのことを話していきたいと思います。
  さて、明日は節分で多くの家庭では「豆まき」をしますが、この意味も正しく理解していないと単に豆をまくというゲームになってしまいます。それでは節分というのは1年に何回あるでしょうか。皆さんの中には年1回と思っている人も多いと思いますが、本来節分というのは〝季節の移り変わる時〟という意味であり、立春・立夏・立秋・立冬の前日を指しているのです。ところが旧暦では立春から新年が始まると考えられていたため、次第に「節分」といえば春の節分を指すことになったのです。そうすると節分は新年の1日前ということで大晦日になります。従って、その年の邪気を祓うということで、さまざまな行事が行なわれています。これらの代表的なものが豆まきです。
  豆まきは平安時代に中国から伝わりました。それでは何故豆をまくのかという理由ですが、ここにも十干十二支の考え方がかかわっているのです。皆さんは鬼門という言葉を知っていますか。鬼門とは鬼が出入りする北東の方角ですが、十二支では丑と寅の方角(うしとら)にあたります。だから鬼は牛の角を持ち虎皮のパンツをはいているのです。このように、悪魔のような鬼の目(魔目・まめ)をめがけて豆を投げると魔滅(まめ)になる、そして鬼門の邪気を払うことにより、春が無事に迎えられると考えられていました。
  また、最近は関西で始まった太い巻き寿司を恵方に向かってしゃべらずにまるごといただくという「恵方巻のまるかぶり」が全国的に行なわれるようになってきました。これには七福神にちなんで七種類の具が入っており、「福を巻き込み」「縁を切らない」ために、あえて包丁を入れていないのです。恵方はその年の干支に基づいてめでたいと定められた方向ですが、今年は南南東になっています。明日は豆まきや恵方巻のまるかじりを行なって、新たな気持で立春を迎えてください。〟

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2010年12月15日

グローバル化の推進~小松製作所

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          高校朝礼にて                コマツ建設機械

  12月15日(水)、高校の全校朝礼で代表的なグローバル企業である小松製作所の取り組みを紹介しました。

  〝皆さんはグローバル企業といえば、どの企業をイメージしますか?
真っ先に自動車メーカーであるトヨタやホンダ、次いで電機メーカーのソニー、パナソニック、キャノン等を思い浮かべると思います。しかし、もっとグローバル化の進んだ凄い企業があります。それは、小松製作所です。何故「小松製作所」と言うのか知っていますか?
それは企業の発祥の地が、石川県の小松市だからです。創業は1917年(大正6年)で、元々は鉱山会社でした。その後、1950年代から海外への輸出や海外への工場展開を進めてきましたが、1960年頃キャタピラー社が日本に進出してきたのです。当時日本の機械の耐久性は、外国製の2分の1しかなかったため、このままでは事業を継続していくことは不可能な状態にまで追い込まれたのです。そして、この危機を脱するためにコマツでは、2つの戦略が打ち立てられました。1つはマルA対策で〝品質の向上をはかる〟、もう1つはマルB対策で〝世界に打って出る〟というものです。この危機を改革の好機ととらまえて、本格的にグローバル企業としての動きを加速させたのです。
  現在、コマツは世界50カ国に工場を持ち、従業員の半数以上は外国人労働者です。売上高は1兆8000億円を超え、営業利益は2000億円。実に利益率は10%超という好業績を残しています。しかし20世紀後半には、経営面で大きなピンチがありました。皆さんの知っている関西外国語大学の枚方キャンパスはかつてはコマツの大阪工場でしたが、赤字を解消するために、この工場を売却して経営再建を図ったのです。
コマツの強みは、何と言っても他社にないダントツ商品です。代表的なものとしては「ハイブリット式の油圧ショベル」ですが、この一台の値段は1700~1800万円です。また、GPSを使った「超大型ダンプトラックの無人運行システム」を持っています。このシステムは現在チリやオーストラリアの鉱山で使われていますが、無人で運転することができるため、大幅な人件費の削減につながっています。
  また、衛星やGPSを利用して、「建設機械の位置や稼動時間、燃料の消費等を確認し、自動制御できるシステム」も導入しており、〝24時間365日のサービス体制〟を実現しています。そして遠隔操作により、スイッチを切ることができるため、このシステムは盗難防止や円滑な代金の回収にも役立っているのです。
  危機をバネにして品質を向上させグローバル展開を図ったこと、他社にない商品の差別化を図ったこと、簡単に真似できないように主要な部品はすべて自社で作るようにしたこと等、コマツに学ぶべきことは非常に多いと思います。皆さんには、これからもこの朝礼を通じて特色ある企業の取り組みを紹介していきたいと思っています。〟

2010年11月27日

B.O.Pに対する取り組み

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  先日の高校の全校朝礼でB.O.P(Base of the Pyramid)の話をしましたが、生徒達からも色々な質問が寄せられています。本校の生徒の中にはボランティア活動に対する意識の高い生徒が数多くいます。しかし、漠然とした思いはあっても具体的にどういうことをすればよいのかは分らないという状況です。困っている人達のために何とかしてあげたいという気持ちは非常に大切なことだと思いますが、その前にまず自分がどうして生計を立てていくのかということをしっかりと考えておくことが必要です。社会に出てからも自分の生活費は親から出してもらってボランティア活動をするということなどありえません。困っている人を支援することを通じて事業展開をはかっていくということを考えて生まれてきたのが「B.O.Pビジネス」と言われるものです。
  B.O.Pというのは世界の所得別人口構成の中で、最も収入が低い所得層を指す言葉ですが、地球上の約40億人がこの層に該当しており、B.O.Pビジネスは、市場規模が約5兆ドル(400兆円~450兆円)にも上ると言われています。これは日本のGDPに匹敵する膨大な金額です。そして、B.O.P層のうち実に30億人がアジアに居住しています。言い換えるとアジアの人口の80%がBOP層なのです。企業にとっては利益を追求しつつ、低所得者層の生活水準の向上に貢献できるという「Win-Winのビジネスモデル」が求められるため、現地でのさまざまな社会課題の解決をはかるという基本的な姿勢が不可欠です。具体的には、水や生活必需品を提供したり、低所得層にも購入可能な商品を販売して健康を増進したり、新たな雇用を生み出すことにより貧困を削減する等があげられます。
  すでに世界のさまざまな企業がB.O.Pビジネスに参入していますが、日本は欧米諸国と比較して、具体的な活動事例が少ないのが現状であり、経済産業省も本年7月に『政策的支援の方向性と具体的取り組み』と題する提言を発表する等官民連携した新たなビジネスモデルの構築をはかろうとしています。

2010年11月25日

日本のエネルギー事情~低い自給率

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  日本において、我々の日常生活に直結する2つのアキレス腱は〝低い食料自給率とエネルギー自給率〟です。食料自給率(カロリーベース)は40%で、60%を輸入に頼っていますが、エネルギー自給率にいたっては18%しかありません。しかも、これには原子力発電の14%分が含まれているため、実質的な自給率はわずか4%しかありません。このように日本はエネルギーのほとんどを海外に依存しており、先進7ヵ国(G7)の中でも極めて低い数字です。
  今後、途上国の経済発展が進展するのに伴い、エネルギーの消費が大幅に増大することが予想され、中長期的には石油や石炭、天然ガス、ウラン等の価格は確実に上昇することになります。従って、日本におけるエネルギー問題を解決するためには、従来の化石燃料を効率的に使用するための省エネ技術の改良と新たな再生エネルギーの開発・導入が必要です。そして、すべての国民に対する『省エネ運動』の啓蒙を行なっていかなければなりません。
  新たな取り組みとしては、ゴミを燃やす廃棄物発電、 家畜の糞や食品廃棄物を利用するバイオマス発電、燃料電池、太陽電池、潮力発電、波力発電、海洋温度差発電、日本海溝に眠っているメタンハイドレート*の活用等があげられます。
いずれにしてもこのエネルギー問題は日本にとって重要なテーマであり、避けて通ることはできません。これから、これらの取り組み状況を取り上げていきたいと思っています。

  *メタンハイドレート・・・水の分子に天然ガスが取り込まれたシャーベット上の物質で日本周辺の深海に大量に存在している

2010年11月24日

高校全校朝礼~グローバル化への対応  B.O.P~

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 〝前回の全校朝礼では、「この110年間で世界の人口は4倍の69億人なったこと、今後、更に人口が増加(年間7~8千万人)し、2050年には90億人を超えること、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)をはじめVISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ連邦、トルコ、アルゼンチン)とする新興国がこれからも急速な経済発展を遂げていくこと。」等の話をしました。
  経済が発展するということは、さまざまなビジネスチャンスがあるということです。このビジネスが成り立つかどうかということについて、2つの靴のメーカーが行なった調査(マーケットリサーチ)があります。ある発展途上国で靴が売れるかどうか、それぞれのセールスマンが調査することになりました。この2人のセールスマンの答えは全く逆でした。1人は“この国では誰も靴をはいていないので、靴は売れません。”という報告を行ないました。これに対して、もう1人のセールスマンは、“大変有望な市場です。靴をはくことの快適さを知れば、人はどんどん靴を買うでしょう。”と報告しました。これを受けて、この会社はその国で靴を販売することを決定し大成功を収めたのです。
  今これと同じことが新興国を中心に起こっています。皆さんは“B.O.P”という言葉を知っていますか?これは“Bottom Of the Pyramid”の略で《ピラミッドの底辺》を意味する開発途上地域の低所得者層のことです。年間の世帯所得は3,000$(日本円で約25万円)以下です。Bottomという言葉は差別用語ということで、最近はBaseを使用するようになってきましたが、この貧困層は世界人口の60%弱、40億人にものぼります。そして、この層の市場規模は実に5兆$(400兆円~450兆円)という巨大なものです。そのためB.O.Pを巨大市場と位置づけ、ビジネスを展開しようとする動きが加速してきました。
これらのビジネスの特徴は ①現地のニーズに合わせた商品づくり(開発)を行なう ②現地住民をビジネスに巻き込みながら販売する ③現地のNPO法人と連携して、社会的な課題も解決する というものです。
  1つの例として、インドの農村部において大成功を収めているユニリーバという会社を紹介します。この会社の活動は、①シャンプーや洗剤、石鹸を小分けにして販売する ②農村の女性を販売スタッフとして採用し、収入を増やしてあげる ③手洗いは衛生的であるとの啓蒙運動を推進している ④現地にある400のNPO法人を連携している というものです。
  これまで日本企業は、このような動きに対して消極的で高級志向を目指してきました。しかし、これからはボリュームゾーンであるB.O.Pやこの層の上位に位置する中間層の市場に目を向けていかなければなりません。つまり、ターゲットをどのように絞るかということが大切なのです。〟


2010年11月22日

厳しい雇用情勢

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  マスコミ報道によると、2010年4月~9月の企業業績は概ね回復基調にあるとのことですが、各企業は通年の決算(2011年3月期)については、当初計画を据え置く等慎重な姿勢を崩していません。このため依然として厳しい雇用情勢が続いており、平成21年度(2009年度)に大幅に悪化した有効求人倍率や完全失業率についても、急回復するということはあまり期待できない状況です。
  今、日本経済は極めて難しい局面を迎えており、国際競争力もOECD諸国の中で27位と低迷しています。本年の前半は、エコカーや省エネ家電製品に対する『エコポイント制度』がある程度景気の落ち込みをカバーしてきましたが、構造的な問題は解決されていません。急激な円高、高い法人税、非正規社員に対する雇用規制、温暖化ガスの25%削減等あまりにも国際競争力を弱める要因が多すぎます。これらの抜本的な解決がはかれないということになると、これまで日本経済を牽引してきた輸出企業は国内生産を諦めて海外シフトに舵(かじ)を切らざるを得ない状況になります。そして、既に多くの企業でこの傾向は出てきているのです。この結果、中小企業も含め製造業を中心に日本国内での雇用は益々厳しさを増すことになります。エコポイント制度のような対症療法で解決できるようなものではありません。
  現在の大学生の就職内定率も58%という非常に厳しい状況です。これでは若者に不安感を与えるだけになってしまいます。当然のことながら消費の低迷も避けられません。日本丸という大きな船をどういう方向に向わせるのかという指針が必要であると思っています。

2010年11月04日

大韓民国の経済状況

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  朝鮮半島の歴史を遡ると、3世紀の終わりごろに氏族国家が成立し、高句麗、百済、新羅の三国時代に続いて高麗、朝鮮が国を樹立、日本の統治を経て、第2次世界大戦後は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と大韓民国の2つの国家が成立しました。その後、朝鮮動乱によってインフラが壊滅し、大韓民国は経済面では大きく立ち後れていましたが、漢江の奇跡と呼ばれる経済発展を遂げました。そして、アジア通貨危機による経済的な危機からの脱却以降はIT、電機、造船、鉄鋼、自動車、金融等の産業で成長を続け、2008年にはGDPで世界15位に躍進しました。現在はサムソン、現代、LG等の財閥企業が積極的な戦略経営を展開し、グローバル企業としての強固な地歩を固めつつあります。
  大韓民国の国土面積は約10万平方キロメートルで、日本の約4分の1、人口は4887万人で、日本の約4割弱です。また、2008年の名目GDPはウォン安のため9291億ドル、1人当たりのGDPは2万ドルを切って17175ドル、経済成長率も2007年5.0%、2008年2.5%、2009年0.2%とドル換算では低下してきています。
  日本との関係を見ると、日韓間の人の往来は年間500万に迫る勢いになっています。また、韓国の対外輸出の増加に伴い、日本からの部品輸入や日本への特許使用権料の支払いが増加しており、戦後一貫して韓国の対日貿易は赤字が続いています。このように韓国ではなお技術、部品、素材等、あらゆる面で日本への依存度が高いという状況が続いていますが、最近ではエレクトロニクス分野等で日本を凌ぐようになってきています。
  韓国と日本は、大した資源も大きな国土もない、少子化が進んでいる、食料自給率が低いといった点では実に似かよっています。両国がこれから世界で認められていくためには、技術立国を支えるグローバル人材の育成が不可欠なのです。

2010年11月01日

世界の国々~ドイツ連邦共和国

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  先日、ヘルバルト校からの研修生を受け入れましたが、この機会に「ドイツ連邦共和国」について紹介します。歴史を遡ると、4世紀にゲルマン民族がローマ帝国に侵入して以来、ドイツ帝国、神聖ローマ帝国、プロイセン王国、ドイツ帝国、ワイマール共和国を経て戦後東西ドイツに分かれました。その後、東西の冷戦を経てベルリンの壁の崩壊により1990年に東西ドイツが統合され、現在に至っています。
  第二次世界大戦後、旧西ドイツは日本と同様、急速な経済発展を成し遂げましたが、1990年の東西統一以降は旧東ドイツへの援助コストの増大、社会保障のためのコスト増大などが重荷となって経済が低迷しました。また旧東ドイツでは市場経済に適応できなかった旧国営企業の倒産などで失業が増える等の社会問題が発生しました。それでもGDPは、アメリカ・日本・中国に次いで第4位の経済大国、国際貿易量はアメリカに次いで第2位であり、EU加盟国第一の経済力を有しています。ドイツは戦前から科学技術に優れており、ガソリン自動車やディーゼルエンジン、液体燃料ロケット等を発明しました。現在でも技術力には定評があり、自動車のメルセデス・ベンツ、ポルシェ、BMW、アウディ、フォルクスワーゲン、電機のシーメンス、航空機のルフトハンザ、ドイツ銀行、光学機器メーカーのライカ等の世界的に著名な企業が数多くあります。
  日本とのつながりは深く、明治維新を経た1870年代から1880年代までは、ドイツ帝国の文化や制度が導入され、わが国の近代化の過程に大きな影響を与えました。そして、現在、ドイツは日本にとって欧州最大の、日本はドイツにとって中国に次ぐアジア第2位の貿易相手国です。
  今、ドイツはアンゲラ・メルケル首相の下、EUのリーダーとして環境をはじめとする産業の振興や財政の建て直しをはかる等、多くの課題に真正面から取り組んでいます。

2010年10月29日

これからのエネルギー事情

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  今後、益々世界人口の増加や途上国の経済発展が予想されますが、地球の環境を守っていくためには、頭を完全に切り替え、これまでの枠組みを大きく変えることが大切です。20世紀を振り返ってみると、この100年間は石油というエネルギーをベースにした『大量生産・大量消費・大量廃棄』の時代でした。そして、世界の人口は実に4倍になり、物質的な豊かさを求めて人々は経済活動を展開してきました。しかし、一方で温暖化や異常気象、土壌・水質の汚染等、地球環境面においては極めて憂慮すべき事態を招いてきています。
  これに歯止めをかけるには、化石燃料を使わないエネルギーの創出と効率的な活用が必要になってきます。これらはクリーンエネルギーと呼ばれており、代表的なものはほぼ半永久的に利用できる太陽のエネルギーです。これにはさまざまなものがありますが、大きく分けると太陽エネルギーを直接利用する「太陽光」「太陽熱」と間接的に利用する「水力」「風力」「海流」「海洋温度差」「放射冷却」「振動」「浸透圧」「波力」「大気熱ヒートポンプ」「地中熱」や「薪」「バイオ燃料」等です。また、最近「コ―ジェネレーション」「燃料電池」等も注目を集めています。
  なお、「原子力」については安全性の観点からクリーンエネルギーに含めるかどうかという論議もあるようです。また、エネルギーの効率的な活用という面では蓄電の技術や新たな送電網づくりが進んできています。
  これからの経済発展を考えた場合、エネルギー問題は食糧問題と同様、国家戦略として位置づけられなくてはなりません。今はそれぞれの国によってエネルギー事情が大きく異なるため、各国は独自のエネルギー施策をとっていますが、エネルギー自給率の低い日本にとっては、国民一人ひとりが今後エネルギー問題について関心を持つことが大切です。
  これから何回かに分けてエネルギーに関する課題や新技術の動向について取り上げていきたいと思っています。

2010年10月20日

優れた環境技術を生かす

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  昨今、いたるところで日本の国際競争力の低下が取り上げられてきていますがこの原因を一口で言うとグローバル化という大きな潮流に乗り遅れたということです。言い換えると日本経済が絶好調であった1980年代に打つべき手が打てていなかったということであり、現在その時のツケが回ってきていると考えなければなりません。
  昔から〝失敗の芽は得意(成功)の中にあり、成功の芽は失意(失敗)の中にある〟と言われています。また、〝ピンチはチャンス〟〝ピンチとチャンスは裏表〟という言葉もあります。日本にとって厳しい状況にあるのは間違いありませんが、プラス思考に立つと、経済情勢の厳しい今が日本にとってはチャンスです。
  今後、BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)をはじめVISTA(ベトナム・インドネシア・南アフリカ・トルコ・アルゼンチン)等の途上国が大きな経済成長を遂げることになり、これに伴い温暖化ガスの排出量が増大することになります。この対策を講じないと、地球環境は壊滅的な打撃を受けることになるでしょう。そのため、世界各国において、さまざまな環境への取り組みが始まっています。日本も2020年には、温暖化ガスの排出量を1990年比25%減にするという意欲的な目標を掲げていますが、現時点においてはこれまでの増加分を含めると40%に近い削減が必要ということになります。このように見ていくと、長期的に先進諸国では温暖化ガスを半減するというくらいの取り組みが必要になってくるのは間違いありません。
  これから日本が早急に取り組まなければならないのは中長期の視点に立った国家戦略の構築です。そして、その中核となるのがこれまで蓄積してきた日本の強みである「優れた環境技術」ではないかと思います。ハイブリッドカーや電気自動車への切り替え、非食料バイオ燃料の精製、LED照明への切り替え、太陽光・風力・バイオマス発電の促進、CO2の地下貯蔵、スマートグリッド(次世代送電網)の導入等数限りなくあります。これらの環境技術に磨きをかけ、官学民が連携して世界をリードしていくことが、元気な日本を取り戻すことになると思っています。
  
  これから、この校長通信を通じて、さまざまな環境技術とその動向について取り上げていく予定です。


2010年09月21日

高齢化・高齢・超高齢化社会

  世界保健機構(WHO)では65歳以上を老人と定義しており、最近、マスコミには高齢化についてさまざまな表現がなされています。人口構成を表す言葉に、「高齢化社会」「高齢社会」「超高齢社会」「少子社会」というものがありますが、これらを整理してみたいと思います。
  ◇高齢化社会・・・高齢者(満65歳以上)が全人口の7%超~14%
  ◇高齢社会・・・・高齢者(満65歳以上)が全人口の14%超~21%
  ◇超高齢化社会・・高齢者(満65歳以上)が全人口の21%超
  また、少子社会は満18才未満の子どもの数が満65歳以上の高齢者より少なくなった社会のことを指します。日本は1970年(昭和45年)に高齢化社会に、1994年(平成6年)に高齢社会になり、2007年(平成19年)には超高齢社会となりました。
  この高齢化社会から高齢社会に移行するまでの年数を見ると、フランス115年、スウェーデン85年、ドイツ40年、イギリス47年に対して日本はわずか24年です。そして、このままの状況が続くと、2055年には高齢化率は何と40%になると予想されています。このように現在日本の高齢化は世界一のスピードで進展しており、これに伴って高齢化に伴う医療費や年金等の社会保障費が増大するからです。日本の年金や医療等の制度のベースは平均寿命が50歳という時代に構築されたものであり、人口が増加する局面では世界に誇れる素晴らしい制度でした。しかし、人口が減少する局面においては財政面で大きな負担になっており、制度の再設計が不可欠な状況です。
  国民一人ひとりが高齢化に伴う医療や年金問題について関心を持たなければならないと思っています。

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2010年09月17日

世界における挨拶

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  グローバル化が進展する中で、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力が大切になってきますが、日本人は語学力不足に加えて、控えめで内向きな人が多いため、うまく人間関係が築けないという状況が散見されます。しかし、人間関係を円滑に取り運ぶための第一歩は、何と言っても挨拶です。
  世界における挨拶の方法は、互いに声をかけあうだけでなく、特定の顔の表情や身ぶり手ぶりで示す等さまざまであり、宗教、性、年齢、地位、身分、親族関係の有無等によって挨拶の仕方も違っています。
  日本での正式な挨拶は、お辞儀をして名刺を交換しますが、他の国ではあまり見かけません。現在、国際的に見て標準的な挨拶は「握手」ですが、この際に日本人が注意しなければいけないことがあります。それは控えめな性格のため、しっかりと相手の手を握らない握手になりがちであるということです。欧米では一般的に男性同士の握手は思いきり力強くガシッと握ります。特にビジネスの世界においてはこの傾向が強いのですが、これは強くない握手は人格的な弱さと見られるからです。背筋を伸ばし、相手の目をしっかり見て、笑顔を浮かべ、強い握手をしながら、挨拶の言葉を交わします。そして、終わるまで手は握ったままです。 しかし、相手が年配の女性の場合はそっと包むように握ります。
   また、宗教によって挨拶の仕方が異なることも知っておかなければなりません。ヒンドゥー教、仏教は合掌する、イスラム教は必ず右手で握手して、左右の頬を付け合います。 更に、熱帯地方のニューギニアやボルネオ等の種族の中には握手してタバコを吸わせたり、すぐに酒を飲ます という風習がありますし、ミャンマーやマレーシアでは通常鼻をよせて相手のにおいを嗅ぐようです。
  このように世界にはさまざまな挨拶がありますが、挨拶の持つ意味について、今一度考えてみたいものです。

2010年09月13日

日本の次世代育成を考える委員会

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  現在の日本の教育については、〝このままでは駄目だ。何とかしなければ〟と感じておられる人が多いのではないかと思います。
 
  関西経済同友会では『日本の次世代育成を考える委員会』が設置されており、毎月メンバー企業の代表者が集まり会合が持たれています。来月は公立・私立の4名の校長によるパネルディスカッションが計画されており、教育課題を提起することになっています。私もこれに出席するため、本日はオブザーバーとして出席させていただきました。この会の委員長は、広島県警本部長、警察庁生活安全局長を経て、現在パナソニックの常務役員、東京都教育委員、おやじ日本理事長として、教育問題に真っ向から取り組んでおられる竹花豊氏です。
  本日の講師は中央大学の山田昌弘教授で「次世代育成を取り巻く現状と課題~保守化する若者達」というテーマでお話いただきました。講演では〝安定志向の若者達の実態〟〝バブル崩壊から金融危機、リーマンショックによって雇用環境は大きく変わったものの雇用環境は変わっていないこと〟〝努力が報われることが期待できる社会をつくること〟〝若者の保守化と下流化の同時進行が起こっていること〟〝若者の希望を取り戻すためにも雇用構造の大胆な改革が必要であること〟等、さまざまな実例を挙げて説明いただきました。
  その後、正副委員長会議が開かれ、山田教授との懇談が行なわれました。同氏は「パラサイト・シングルの時代」「希望格差社会」「ワーキングプア時代」等数多くの著書を出版されています。私もこの中の一部しか目を通していませんので、機会を見つけて紐解いてみたいと思っています。

2010年09月11日

日印経済連携協定の締結

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  最近の日本の経済政策の中で、注目されるのはインドとの間で経済連携協定締結の大筋合意がなされたということです。これはEPA(Economic Partnership Agreement)と呼ばれていますが、グローバル化が進展する中で急速に世界の国々に導入されるようになってきています。
  これまでの世界の経済を振り返ると、安価な物資が流入すれば国内産業が大きな打撃を受けるということで、これを保護するために通常高率の関税をかけるということが行なわれていました。このような事態を改善し、自由貿易を促進する目的で世界貿易機関(WTO:World Trade Organization、)が創設され貿易の自由化が進みました。しかし、急速なグローバル化の中でWTOを通じた多角的な通商交渉が行き詰まってきており、更に踏み込んだ取り組みが必要になってきました。このため、近年は世界自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)の要素である物品やサービス貿易の自由化に加え、貿易以外の分野、例えば人の移動や投資、政府調達、二国間協力等の包括的な協定を行なおうとする動きが活発になってきました。これが経済連携協定(EPA)と呼ばれるものです。とりわけ中国や韓国は農業分野等で自国にとって不利な条件があっても、相手国との関係強化を優先して締結を強化しています。これに比べて、日本の動きは鈍かったため、輸出企業にとっては大きなハンディを背負っているというのが現状です。
  今回のインドとの経済連携協定(EPA)の概要は今後10年間で日本からインドの輸出品は90%、インドから日本への輸出品は97%が無税となるという内容です。インドはBRICsの一角を占め、世界第2位の11億人の人口を抱え、今後高い経済成長が見込まれています。人口減少による国内市場縮小や円高に苦しむ日本企業にとっても、今後最重要市場の一つになるのは間違いありません。これを契機に日本企業が旺盛な需要を取り込み、成長の追い風にして欲しいものです。

2010年08月09日

異常気象の影響~農作物の高騰

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  世界的な異常気象の影響で、最近は、ある地域で大洪水に見舞われたかと思えば別の地域では全く雨が降らず大干ばつになるといったことが頻発するようになってきました。この結果、農産物の価格上昇が避けられない状況になりつつあります。
  特に、小麦価格の国際指標となるシカゴ商品取引所の先物は7月の1カ月間で、1ブッシェル(約27キロ)=4、64ドルから6・61ドルまで40%以上値上がりし、約半世紀ぶりの上昇率を記録し、8月2日には一時7・11ドルと1年11ヶ月ぶりの高値をつけました。この要因は世界の生産量の約1割を占めるロシアで、猛暑と乾燥による干ばつや大規模な火災が発生し、穀物不作による供給不足への懸念が広がっているからです。 更に5日にはロシアが今月15日から12月末まで、小麦、大麦、ライ麦、トウモロコシの輸出制限に踏み切るという発表を受けて、小麦価格は7.86ドルにまで上昇しました。
  日本は、国内で流通する小麦の9割近くを米国、カナダ、オーストラリアから輸入していますが、輸入は政府が管理し、年2回、直近6ヶ月間の輸入価格を基に、製粉会社への売り渡し価格を改定し、製粉会社は、政府の価格を受けて、食品会社などへの小麦粉の販売価格を決めるということになっています。
  3~7月までの輸入価格は、それまでの半年間に比べ、ほぼ横ばいで推移していましたが、次の改定は10月で、3~8月の輸入価格の平均値を反映させるため、売り渡し価格の値上げは避けられそうもない状況です。しかし、現時点ではデフレ下にあることもあり、簡単にパンやカレールー、うどん、ラーメン等の販売(店頭)価格に転嫁すれば消費の低迷につながるため、それぞれの企業においては更なる合理化が迫られることになりそうです。このように世界の異常気象は我々の日常生活にも大きな影響を与えることになるのです。

2010年07月11日

日本の常識は世界の非常識

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  本日(7月11日)は第22回目となる参議院選挙の投票日です。今回は昨年9月に政権交代を果たした民主党が過半数を維持できるかどうかが最大の焦点になっています。しかし、今大切なのは国民一人ひとりが〝どの政党が勝った、負けた〟とか〝個々の政治家がどうのこうの〟といったこともさることながら、日本は歴史的に見て重要な岐路に立たされているということをしっかりと認識しておかなければならないということです。グローバル化が急速に進展し、世界で類を見ない急速な高齢化社会を迎える中で、先進国最悪の財政赤字を抱え、国際競争力が低下している日本をどういう方向に導いていくのか非常に難しい舵取りを迫られています。
  戦後、懸命な努力で世界に冠たる技術立国の地位を築き上げてからわずか20年で日本は国際社会から相手にされない国になりつつあります。先般6月27日、トロントで開催されたG20会議において、先進国は2013年までに財政赤字を半減し、政府債務を安定させるという共通目標を打ち出しましたが、日本はあまりにも膨大な債務のため、例外扱いされてしまいました。このことは、取りも直さず日本が先進国扱いされていないということを意味していると考えなければなりません。
  このまま、超高齢化が進むと貯蓄は減少し、やがて長期債務を賄えなくなるという状況に陥ってしまいます。今、我々が常識であると思っていること、何の意識もなく当たり前のこととして行動していることも世界から見ると奇異に感じられることが多いと思います。まさに、日本の常識は世界の非常識です。今一度すべてのことを見直していかなければならないと思っています。

2010年07月09日

新興国市場におけるメーカー別販売シェア~液晶テレビ

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  1980年代までの世界経済は、アメリカ、日本、イギリス、フランス、ドイツの5カ国(G5)の財務相や中央銀行総裁が中心となって経済・金融情勢や政策について意見交換し、経済の維持安定をはかってきました。その後1986年にイタリアとカナダが加わってG7になり、更に1998年にロシアが加わりG8として現在に至っています。しかし、昨今は世界経済の多極化によって、これらの問題に国だけでは解決できない状況が現出されるようになってきました。今、問題になっているEUにおける経済の混乱もギリシャの借金に端を発しているのです。また、少し前は中近東のドバイにおけるバブルの崩壊が引き金になりました。
  これまで何回も紹介しているBRICsの世界の中に占める割合は国土面積において約30%、人口は約40%になってきています。また、この中でも中国とインド、ブラジルの経済成長は目を見張るものがあります。従って、企業にとってはこれらの新興国における開発・生産・販売の活動、言い換えるとどれだけのシェアを獲得することができるかが非常に重要になってきます。しかし、現状では日本企業が優位に立っているとは言えません。むしろ、この実態を明らかにしていくことが大切です。中国においてはソニーやシャープがサムソンやLG電子と互角の状況になっていますが、インドにおいては韓国企業が50%以上のシェアを獲得していますし、ブラジルにおいては韓国企業が、フィリップスが18%を占めており、日本の企業は1桁台のシェアに甘んじているのです。まさに〝新興国を制するものは世界を制す〟という構図になってきているのです。

2010年07月06日

日本製品の占有率の低下

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  これまで日本は〝ものづくり〟において世界をリードしてきましたが、近年世界市場における占有率が急速に低下してきました。家電・情報通信分野の主力製品であるテレビや携帯電話、リチウムイオン電池、DVDプレーヤー、カーナビゲーション、液晶パネル、DRAMメモリー等を見ると軒並みシェアが低下してきているのがわかります。
特に、世界市場におけるテレビ、携帯電話、DRAMメモリーのメーカー別のシェアを見るとすべてトップは海外メーカーになっています。このうちテレビの2009年7月~9月の売上高について見ると、トップはサムソン電子(21.9%)、2位はLG電子(12.9%)の韓国メーカーで、次いでソニー(9.9%)、パナソニック(9.1%)、シャープ(5.9%)の順になっており、日本メーカーは完全に韓国メーカーの後塵を排しています。
  薄型テレビ市場については、半導体と同様、液晶パネルやプラズマパネルの投資額がシェアの拡大に直結するという構図になっており、まさに体力勝負の様相を呈しています。そして、パネルベイと呼ばれるようなシャープやパナソニックの大型投資にも関わらず、韓国メーカーの豊富な資金力に物をいわせた戦略により劣勢に立たされてきています。
  また、本日の日本経済新聞によると、サムソン電子は2010年の薄型テレビの世界販売目標を年初計画の3900万台から4500万台~5000万台に引き上げるとの方針であることが報道されています。これは前年比47%から63%増ということになり、世界市場の占有率で独走する勢いです。そして、これと同様の状況が他の商品にも起こってきています。まさに日本の家電・情報通信メーカーは正念場に立たされているのです。

2010年07月04日

グローバル人材の育成

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  これまで、グローバル化ということについて何回かに分けて紹介してきましたが、海外市場への進出が必要な最大の理由は少子高齢化に伴い国内市場の成長が見込めなくなったということです。これからは企業が新興国、特に成長著しいアジア市場でどれだけ事業を伸ばせるかがポイントになってきます。そのため日本の企業もこれらの市場に進出していますが、必ずしもうまくいっているとは言えません。それは日本や先進諸国とは全く異なる環境下では、日本流のやり方が通用しなくなっているということであり、現地の人たちとの協働できる人材が育っていないということが上げられます。そして、欧米や韓国企業等にも大きな差をつけられ始めています。このままでは、日本は国際競争に負けてしまうのは間違いありませんが、企業がこの危機的な状況を社会に向って訴えているか、つまり大学や学生に対してグローバル化の中で必要な人材像を示しているかどうかは疑問です。そのため、大学をはじめとする教育機関がグローバル人材育成の必要性を認識せず、これらの人材を輩出するシステムを構築していないように思います。
  また、最近の若者は「内向き志向」で海外に出たがらない傾向にあり、これから成長が期待できる新興国での勤務希望が少ないという結果になっています。日本の国をあげて、グローバル人材を育成する抜本的な取り組みが必要であると思っています。

2010年07月03日

日本企業の相対的な地位の低下

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  これまで日本企業のグローバル化を牽引してきたのは自動車や工作機械、情報通信機器に代表される製造業でしたが、近年世界市場での地位が急速に低下してきています。
  2005年から2009年の4年間で『Fortune Global 500』のアジア企業ランキングによると、アジアトップ20企業における日本企業の数は15社から10社に減少しており、トヨタ自動車もトップの座を明け渡しています。一方で韓国や中国企業が顕著な伸びを示しており、アジアにおいては断トツの競争力を有していた日本企業の競争力が著しく低下してきているのです。特に韓国のエレクトロニクスメーカーであるサムソン電子やLG電子の躍進が目立っており、特に利益額という面では日本のエレクトロニクスメーカーが束になっても適わないほどの格差が生じてきています。サムソン電子は新入社員を進出する地域に駐在させる等、市場を徹底的に分析し、商品開発につなげているようです。この結果、世界市場における日本企業のシェアが低下してきており、このままでは更に下がり続けることになりそうです。
  日本が世界から認められるためには、技術立国としての基盤をしっかりと構築していかなければなりません。まさに今日本は正念場にあると思っています。

2010年07月02日

増大する日本の借金

    日本の借金とGDP
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  今、ギリシャをはじめとする先進諸国の借金が問題視され、財政を縮小する動きが出てきています。借金の額はそれぞれの国の経済規模が異なるため、通常GDPに比べてどれ位の割合になっているかを見ることになっています。これによると、日本の借金は年々増え続け、ついに800兆円を越える膨大な金額になり、世界各国の中でも突出した水準になっています。GDPは1990年までは順調に増加してきましたが、バブル崩壊後の20年間はほとんど増えず、これまで横ばいの状態が続いています。そのため、GDPとのギャップが年々拡大することになりました。失われた20年と言われる所以です。どうしてこういう膨大な借金になったのでしょうか。その理由は低迷する経済を立て直すために、日本各地で公共事業を起こしたこと、高齢化に伴い年金や医療費が増加するにもかかわらず抜本的な見直しを行なわなかったこと、消費税等の税金を上げなかったこと、国民が生活のレベルを下げることを怠たったこと等です。
  通常、これだけの借金を他の国からしていると、以前にアルゼンチンが経験したように、国が破綻するということになります。現在、ギリシャの危機が囁かれているのも、ギリシャ国債を外国が購入しているからです。しかし、日本があまり問題にされないのは、日本国民が1400兆を超える個人資産を有しており、国債のほとんどを購入しているからなのです。言い換えると国が国民から借金している、国民の貯金が国債に変身しているということになりますが、借りたものは返さなくてはいけません。従ってこれからは日本も歳出を抑え、財政を再建していく必要があります。国民一人ひとりがこの状況を正しく認識し、依存心をなくしていくことが大切ではないでしょうか。
           

2010年06月30日

高校全校朝礼~グローバル化 新興市場での商品づくり

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  6月30日(水)、高校の全校朝礼で次のような話をしました。
〝現在、サッカーのワールドカップが開催されており、日本は惜しくもパラグアイに敗れましたが、皆さんはこの国のことを知っていますか。パラグアイは南米の中央部に位置し面積は日本より少し大きく(407千平方キロ)、人口は623万人で北海道や兵庫県より少し多い国です。しかし、一人当たりの年間所得は約1000$ですから日本円に換算するとわずか約9万円で日本の40分の1ということになります。皆さんが持っている地図帳の後ろに世界の国々のデータがありますので、今回ワールドカップに出場している国々の状況を家庭でもよく調べるようにしてください。そうすればより理解が深まると思います。学校の授業だけが勉強ではありませんので、色々なことに興味を持って自分で調べるという習慣を身につけて欲しいと思います。
  さて、最近グローバル化というテーマでお話していますが、ビジネスとして成り立つためには、できるだけ利益のとれる商品を数多く売るということが必要です。このためには採算の取れる価格に設定する必要がありますが、あまり高いと商品は売れません。そのため製造コストを下げようとして、人件費の安いところで作るようになります。このようにして、中国で多くの商品が作られるようになり、世界各国に輸出されるようになりました。そして、更に製造コストの安いベトナムやインドネシアといった国にシフトしています。一方で、大きな消費が見込まれる市場がどこかを見つけ出さなければなりません。単純な見方をすれば人口の多い国ということになりますが、購買力が伴っているかどうかがポイントとなります。このような動きの中で、今注目されているのがインドです。インドの人口は約12億ですが、このうち60%は30歳未満でこれからますます経済成長が期待されています。以前は裸で生活しガンジス川で水浴を行なっている人々の姿や牛の糞尿が垂れ流されているといった状態でした。熱い国ですから人々が冷蔵庫やエアコンが欲しいと思うのは当然です。しかし、高い物は売れません。今、インドで売れている冷蔵庫はアイスボックスに毛が生えたような数本の飲料水が入る程度の商品で1万円以下です。日本の冷蔵庫とは全く異なる物です。今後は、このような現地に合った商品づくりが必要になり、企業はどんどん新興市場に進出していきます。そして、そのための人材が必要になってきます。ほとんどの国で英語が使われていますので、しっかりと語学力を高めるようにして欲しいと思います。〟

2010年06月27日

急速な経済発展を遂げる新興国

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  主要8ヵ国(G8)首脳会議が日本時間26日未明からカナダ東部にあるムスコカで開幕されています。日本からは菅直人首相が出席していますが、各国の首脳による世界の経済情勢や朝鮮半島の核・ミサイル等の課題について活発な討議がなされています。G8というのは日本、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアの先進7ヵ国にロシアを加えた国々で、これまではこの8ヵ国が世界をリードしてきました。
  しかし、2008年から2009年にかけての世界経済はアメリカの金融危機の影響を受け、大きく落ち込みました。この対策として世界各国は金融機関への資金の注入や超低金利政策の導入、国内需要の喚起のための景気対策等を行ないましたが、世界経済はいまだに後遺症に苦しんでいます。更に今はギリシャに端を発したEUの経済危機が全世界に波及するのではないかという懸念が囁かれています。このようにグローバル化の進展に伴って、経済危機の火種はいたるところに存在するようになってきました。  そして、既に世界は先進国と一部の国では解決できない状況下にあり、急速な経済発展をとげる新興国を含めた議論が不可欠になってきているのです。そのため、G8に続き中国首脳などが参加するG20サミットが開催されることになっていますが、この中心になっているのがBRICsとVISTAです。BRICsについてはこれまで何度も紹介していますが、VISTAというのはベトナム、インドネシア、南アフリカ連邦(South Africa)、トルコ(Turkey)、アルゼンチンです。
  今回のサミットでは、金融規制をめぐるアメリカとEU、為替相場をめぐる中国と欧米、環境をめぐる新興国と先進国、日本に対する経済成長強化の要請等、利害が対立する各国の思惑が交錯していますが、このなりゆきを注視していきたいものです。

2010年06月23日

高校全校朝礼~企業のグローバル化

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  6月23日(水)、高校の全校朝礼で次のような話をしました。
〝皆さんは学校で色々なことを学んでいますが、学校というのは将来社会で役立つ力を育てるトレーニングの場です。しかし、現時点において将来どういう道に進んだらよいのか、またどのような仕事があるのかもわからない人が多いのではないかと思います。
 動物の世界では、食物を摂ったり、身の安全を守るということが、最も基本となる行動ですが、人間はこれだけではなく、より豊かな生活を求めたり、人の役に立つために行動することを大切にします。これまで、何度も話しているように、現在の世界の人口は69億人ですが、今後どんどん増え続けて、今から40年後(2050年)には90億人になります。そして、今は実に7人に1人が食べる物にも困っている状況ですが、当然のことながら、これらの人たちの誰もが豊かな生活を望んでいます。
  人間は、おいしい物を食べたい、快適な家に住みたい、素敵な物を着たい、便利な生活をしたい、早く目的地につきたい、おしゃれをしたい等、より良い生活を求め続けてきました。これらの望みをかなえようとして、さまざまな企業が生まれてきました。これらの企業は人やお金を使って、経営活動をしています。企業が追い求めるのはお客様に対する満足度を高めることとその企業で働く従業員の給与や福祉の向上をはかることですが、この実現のためには企業を成長させなければなりません。つまり、売上げや利益を上げていくことが必要なのです。
  仮に企業が潰れると、消費者や取引先等多くの人に迷惑がかかることになり、従業員も仕事を失ってしまいます。これまで日本は人口が増加し、国内の消費も伸びてきましたが、これからは人口減と高齢化が進むため大きな経済成長は見込めません。一方で途上国は目覚しい経済発展を遂げてきており、今後も大きな成長が期待できます。所得はまだまだ低い水準にとどまっていますが、人がたくさんいるところはそれだけ潜在的な購買力が大きいということであり、企業にとっては魅力的な市場ということになります。これからは日本という枠にとらわれず、グローバルな視点で市場をとらえていかなければなりません。その上で、新興国の人達に満足してもらえるような低価格の商品づくりを行なっていくことが必要なのです。皆さんはこれから企業のグローバル化がますます加速されてくるということを是非認識しておいてください。〟

2010年06月21日

農業の実態を知る

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  今回の修学旅行の大きなテーマは「環境プログラム」と「ファームステイ」です。今年はファームステイの取り組みを始めて6年目になりますが、受け入れ先の農家からは〝単なる観光旅行としてではなく、生徒達に農業の大切さや米や野菜作りの苦労や喜びを知ってもらいたいという思いで取り組んでいる〟という多くの声が寄せられています。
  現在のわが国の食料自給率は41%と先進諸外国の中でも極端に低い水準になっています。また、農業に従事する人の高齢化や耕作地の減少が続いています。2009年2月時点では、農業の就業人口は過去最低の285万人であり、このうち65歳以上の高齢者が全体の6割以上を占めており、40歳未満はわずか8%に過ぎません。つまり農家には後継者がいないという深刻な状況下にあります。更に耕地面積も前年比で0.4%減となっているのです。
  そして、多くの食料を海外に依存しながら一方で米の減反政策を実施する等ちぐはぐな動きが目立っています。いずれにしても、このままの状況が続けば日本の農業はますます衰退の一途を辿ることになります。これから世界の人口が増え続ける中で、食料が不足し争奪の激化が現実味を増してきています。日本にとって食料問題はアキレス腱になる可能性が大きくなることが予想されますが、残念なことに国民の危機感は薄いようです。
  今回のファームステイを通じて、生徒達が農業の大切さを知り、食糧問題を考えるきっかけにして欲しいと思います。また、将来の職業を考える際にも、人間が生きていくためのベースとなる「食」を視野に入れた選択を行なってくれることを期待しています。

2010年06月11日

世界のエネルギー事情

  20世紀は〝石油の時代〟と言われるように、石油がアメリカや日本、ドイツをはじめとする先進国の工業化に大きな役割を果たしてきました。石油は化石燃料であるため、常に後30年間で無くなると警鐘がならされながら新たな油田の発掘等が続き、これまで何とか需要に見合う生産量を確保してきました。しかし、中国、インド等の発展途上国の急速な経済成長に伴い、石油や石炭、天然ガスといった化石燃料の需要がますます大きくなり、2030年には、世界のエネルギー消費量は現在の1.6倍に達すると予想されています。
  これを前提に世界のエネルギー供給可能量(可採年数)を予測すると、石炭が147年、石油が40.5年、天然ガスが63.3年と見込まれています。勿論、今後新たな油田や鉱山の発見の可能性もありますが、いずれにせよこれらは限りある資源であり、いよいよ化石燃料の枯渇が現実味を増してきました。
  しかし、今も石油が世界のエネルギーの主力であることは間違いありません。そして、これは取りも直さず二つの大きな問題を抱えているということになります。一つ目は、需要の見通しどおり石油需要が増え、世界中が中東からの輸入により多くを頼ることになれば、世界のエネルギー全体が中東の不安定な政情にますます大きな影響を受けることになるということです。二つ目は石油の供給が需要を下回ることになれば、エネルギー価格が高騰し、各国が必要な資源を確保することが困難になる可能性が出てくるということです。
  特に、エネルギーの大部分を石油をはじめとする海外の化石燃料に依存している日本は、将来の世界のエネルギー情勢の変化に大きく影響されることになります。今後、我が国のエネルギーの安定供給を図るためには、グローバルかつ長期的な視点に立って、化石燃料の確保につとめると共に新エネルギーの創出をはかる等の対策を講じることが不可欠であると思っています。

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2010年06月09日

高校全校朝礼~グローバル化の推進

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  本校では、考査や行事のスケジュールを考慮して、中学・高校・中高合同の3つのパターンで全校朝礼を実施しています。司会は生徒会の役員が行ない、通常は部活動の表彰の後、校長訓話ということになっていますが、中学生と高校生では理解力にかなりの差があるため、本年度、中学生には〝環境〟高校生には〝グローバル化〟という異なるテーマで話をすることにしています。本日(6月9日・水)は、高校の全校朝礼において次のような話をしました。
  〝日本は第2次世界大戦で全土が焼野原になり、戦後は十分な食べ物も着る物も住む家もないという状況でした。しかし、この苦境に対しても先輩達はくじけることなく、欧米に追いつけ、追い越せという強い思いで、懸命な努力を積み重ねました。この取り組みの結果、自動車・電機に代表されるような産業が発展し、世界第2位のGDPを有する経済大国になったのです。これを支えたのは、生産人口の増加と、アメリカやヨーロッパ等の先進国への輸出の増大です。
  この間の世界はアメリカとソ連に代表される東西の冷戦が続き、各国が軍事力の増強をはかる一方で、日本は軍事産業以外の産業分野に注力してきました。しかし、ベルリンの壁が崩壊して、この緊張関係が緩和されると一挙にグローバル化が加速したのです。同時に情報化が進展し、BRICsを中心とする新興国が急速に経済発展を遂げるようになってきました。BRICsというのは、ブラジル、ロシア、インド、中国ですが、これらに続いて、VISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)といった国々も大きな成長が見込まれています。
  今、世界には1日に5ドル以下で生活している人が約40億人いると言われています。これらの人達を対象とする商品は、これまで先進国で受け入れられていた商品とは全く異なるコンセプトのものです。自動車の例を挙げると、インドでは日本や欧米で売れている通常200万円を超えるような物は受け入れられません。そして、価格が20万円台という超低価格の自動車が発売されています。占有率のトップはトヨタでもGMでもなくスズキ自動車、2位はタタ自動車となっています。この例でも分かるように、これからは、あらゆる商品において世界共通モデルというものは通用しなくなり、その国に応じた個別のモデルが必要になってくるのです。言い換えると国別の商品開発が不可欠となるため、これまでのやり方を抜本的に見直していかなければなりません。グローバル社会においては、国内に閉じこもるという行動パターンは通用しないということになるのです。どうか、皆さんはグローバルな視点で行動して欲しいと思います。次回は電機を例にあげてお話します。〟

2010年05月21日

日本の競争力急落

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  この度、IMD(スイスの有力ビジネススクールである経営開発国際研究所)が発表した『2010年の世界競争力』の結果は大きな衝撃を与えています。これによると、世界における日本の総合順位は58カ国・地域で27位と、昨年の17位から急落しました。この調査は毎年実施されていますが、「経済状況」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「社会基礎」の分野で約300項目の統計や独自調査の結果を分析し、順位を発表しています。1位はこれまでのアメリカを抜いてシンガポール、2位は昨年と同様香港、3位はアメリカとなっていますが、アジアの国々がランクを上げている中で、日本の低迷振りが目を引く結果となっています。アジア勢は台湾が「ビジネスの効率性」が高く評価され、23位から8位に大躍進、中国が20位から18位に、韓国が27位から23位にランクを上げました。これに対して、日本は「経済状況」が大幅に低下し、「政府の効率性」では膨張し続ける財政赤字が評価の足を引っ張りました。この調査が始まった1989年から93年までの5年間、日本がトップであったことを考えると、この20年近く一体何をしていたのか慙愧(ざんき)に堪えません。
  特に、日本の法人税の高さに関しては、58カ国・地域で最下位となり、外国人労働者や外国企業の受け入れ態勢も低い評価となりました。また、製造業への社員の派遣が制限されることになると、国際企業は軸足を日本から海外に移すことになり、〝空洞化〟が生じることになります。こうなると、雇用情勢が一段と厳しくなるのは避けられません。企業の国際競争力を高めるためには、法人税の見直し、政府の強力な支援、さまざまな規制緩和を早急に行なわなければなりません。また、公的債務という負の遺産を後世に引き継がないためには、税金の無駄遣いを徹底的に排除すると共に消費税の引き上げ等税制の見直しを図っていかなければならないのではないでしょうか。日本国民全員が意識を改革し、危機感を持って取り組んでいくことが何よりも大切であると思っています。

2010年05月19日

高校全校朝礼(グローバル化~日本を客観的に見る)

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  5月19日(木)、高校の全校朝礼を講堂で実施しました。部活動の表彰の後、準備してきた世界地図を見せながら「グローバル化」というテーマで次のような趣旨の話をしました。
〝皆さんは、今大学への進学を目指して、勉学に励んでいます。そして、大学を卒業すると社会に出ることになります。高校3年生の皆さんは5年後に、高校1年生の皆さんは7年後に、社会に出てそれぞれの分野で活躍することになりますが、“その時の社会はどうなっているのか”ということを、しっかりとつかんでおくことが大切です。5年後や7年後のことですから、明確にはわかりません。しかし、世の中がどういう方向に進んでいくのかという“トレンド”を押さえておけば、ある程度の予測は可能です。
これから日本において避けて通れないトレンドは、大きく3つあります。
 1つ目は情報化、2つ目はグローバル化、3つ目は少子高齢化です。
 3つ目の少子高齢化は日本をはじめとする先進諸国の問題ですが、1つ目の情報化と2つ目のグローバル化はお互いに影響しながら進んできます。グローバル化というのは、“グローブ”が地球という意味ですから、地球規模で色々なことが起こってくるということになります。一例をあげるとイチロー選手の活躍ぶりやオリンピックの状況や世界中の色々なニュースがすぐに伝わってきます。またインターネットの急速の普及によって、人の壁・時間の壁・地域の壁がなくなってきています。そして、ヒト・モノ・カネ・情報が国境を越えて移動することになります。そうなると、いかにグローバルな視点で物事を見られるかどうかが、極めて大切になってきます。言い換えると、日本という国を中心に考えて行動するのではなく、日本を客観的に見ていくということです。
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  これは日本を表した世界地図ですが、日本が真ん中にないため、皆さんは何か違うという印象を持つと思います。アメリカやヨーロッパから見ると、日本はユーラシア大陸の一番はしに位置しています。そして中国のすぐ近くにある「人口が中国の10分の1という小さな島」というように見えます。
  これまでは一流大学を卒業すれば一生安泰であり、ほとんど日本の中で生活をするという時代でした。しかし、これからはグローバル社会の中で「何ができるのか」「何をしてきた」が重要になってきます。つまり、日本の1億2千万人を対象に仕事を考えるのではなく、世界の70億人~80億人を対象に考えていくということです。世の中に役立つ仕事は無限にありますが、これらをやるためにしっかりとした学力の裏づけ、基礎づくりをしておいて欲しいと思います。〟

2010年05月16日

世界経済の動向~金融恐慌の持つ意味

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  将来社会で活躍するためには、これから世の中がどのようになっていくかをしっかりと把握しておくことが大切です。とりわけグローバル化がますます進展する中にあっては、常に世界経済の動きを注視しておかなければなりません。それでは、現状はどうなっているのでしょうか。
  2008年から2009年にかけての世界経済はアメリカに端を発したサブプライム問題とリーマンショックの影響で大きく落ち込みました。各国は金融機関への資金の注入、超金利政策の導入や国内需要喚起のための景気対策等さまざまな対応を行なってきました。しかし、世界経済は未だに本格的な回復には至らず、後遺症にもがき苦しんでいます。
  この最大の原因は、世界経済がアメリカの過剰な個人消費に支えられた歪(いびつ)な状況に依存してきたからです。分かりやすく言えば、アメリカでは個人が金融機関から借金をして消費に回していました。そして、多くの国はアメリカに輸出することによって経済成長を達成してきていたのです。しかし、今回のリーマンショックの結果、アメリカでは金融機関からの個人の借り入れができなくなったため、一気に経済が破綻しまいました。これが世界全体に波及することになり、日本においてもアメリカへの輸出依存度が高かった輸出産業を中心に大きな打撃を受けることになりました。その後、G7と呼ばれるアメリカ、日本、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア等の先進諸国においては懸命な景気対策を講じましたが、経済は今も本格的に回復しない状況が続いています。一方、中国をはじめとする新興国経済は個人消費や公共投資の拡大によって回復の兆しを見せ始めています。
  アメリカ発の金融恐慌の持つ意味は〝世界経済の牽引役が先進国から新興国へと交替する〟言い換えると〝アメリカの一極体制から世界多極化体制へ移行する〟可能性が高まってきたということではないかと思います。

2010年05月05日

地域の活性化

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  現在、日本では地方の過疎化が深刻な社会問題になっています。工業化の進展と共に大都市への人口集中が進み、農業や林業、漁業に従事する人が激減してきました。しかし、近年、製造業やサービス業における成長が期待できなくなると、雇用の確保が難しくなり、失業者が増加する等の憂慮すべき事態を招いています。一方で、食料自給率は41パーセントと先進諸国では最低の水準にもかかわらず、農業や漁業に従事する人は減少の一途をたどっています。まさに、労働力のミス・マッチが生じてきているのです。和歌山県も大阪府に隣接していますが、全体的には過疎化が進んできており、連休中に訪問した日高郡も人口減が続いているようです。しかし、都会にはない素晴らしい自然と海や山の豊かな幸に恵まれています。
  先日、初めて訪れた日高郡の由良町大引にある白崎海洋公園(しらさきかいようこうえん)は、全体が白い石灰岩で囲まれていて、日本の渚百選に選定された美しい海辺の公園です。近海を漁船で遊覧しましたが、青い海と白い岩山のコントラストは素晴らしい景観です。この石灰岩は古生代ペルム紀のもので、直径が数mm~1cmほどのラグビーボールを小さくしたような形の有孔虫のフズリナなどが堆積したもので、雨水によって侵食されてできたカルスト地形や海に浮かぶ奇岩も魅力的です。また、周囲は豊かな自然に囲まれており、ダイビングスポットも多数あり、毎年3月から7月頃にはウミネコの大群が公園全体に飛来します。
  この他にも日高郡には、先日紹介した観光スポットとしての道成寺やホタル、農作物としてのみかん、木材等の魅力的な材料もあります。今一度、身近にあるものを見直し、これらを前向きに活かしていけば、地域の活性化がはかれるのではないかと思いました。

2010年04月24日

日本の経済力の現状~伸び悩むGDP

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  GDPというのはGross Domestic Product の略で〝一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額〟を表わすものです。現在のGDPの世界ランキングの10位までをあげると次のとおりです。
  1位 アメリカ、2位 日本、3位 中国、4位 ドイツ、5位 フランス、6位 イギリス、7位 イタリア、8位 ロシア、9位 スペイン、10位 ブラジル
  しかし、IMF(国際通貨基金)が2009年4月に発表した世界経済の見通しによると、中国のGDP(国内総生産)が今年日本を抜き、世界第2位になるとのことです。この結果、日本は1968年(昭和43年)にドイツを抜いて以降、守り続けてきた世界第2位の経済大国という地位を失うことになります。
  これまで、日本はアメリカの旺盛な消費に支えられ、自動車・電機・工作機械等の輸出産業が経済を牽引し、技術立国としてGDPを成長させてきました。ところが、バブル経済の崩壊に伴う後遺症からの脱却が遅れ、更に今回のリーマンショックの追い討ちによって、〝失われた20年〟という言葉に現わされるように、完全に成長軌道から外れてしまっているのが現状です。この一方で、世界経済はアメリカの一極集中が崩れ、BRICsを中心とする国々が急成長を遂げてきています。

  昨年、米ゴールドマンサックス社の2007年時点における『2050年の世界国別GDPランキング予想』が公表されましたが、これによると順位が次のとおり、大幅に入れ替わっています。  
  1位 中国(21.7倍)、2位 アメリカ(2.7倍)、3位 インド(34.5倍)、4位 ブラジル(8.6倍)、 5位 メキシコ(10.5倍)、6位 ロシア(6.7倍)、7位 インドネシア(16.3倍)、8位 日本(1.5倍)、9位 イギリス(1.8倍)、10位 ドイツ(1.5倍)、11位 ナイジェリア(29倍)
    *(  )内は 2007年対比の倍率
  とりわけ、中国やインドの経済成長率は突出しており、わが国における全体の貿易額に占める割合はついにアメリカを抜いて、中国が一番になりました。
いずれにしても、日本にとって、今後台頭の著しい隣国中国との協力体制を築いていくことがポイントになってくると思います。

2010年04月23日

日本の経済力の現状~国際競争力ランキング

  IMD(国際経営開発研究所)は毎年世界の国々を比較して『国際競争力ランキング』を発表しています。これによると2009年、日本は57国中17位(2008年は22位)と低迷しており、ここ数年中位から抜け出せない状況です。かつて1989年から1993年までの5年間が首位であったことを考えると、この大きな落ち込みは隔世の感があります。
  この調査のベースになるのは「インフラ」「政府の効率性」「経済状況」「ビジネスの効率性」の4分野の綜合順位ですが、インフラは5位、ビジネスの効率性は18位、経済状況は24位、政府の効率性は40位となっており、政府の効率性に大きな課題があることが解ります。
  それでは、わずか20年くらいで何故これほどまでにランクが低下したのでしょうか。一口で言えば、東西の冷戦終了後の〝グローバル化〟という大きなトレンドに乗り遅れたということですが、この原因は「国際化に必要な土台部分が欠落していた」からであり、残念なことに今も大きな改善は見られません。
  日本が極端に劣っている項目としては「法人税率が極めて高い」「政府が膨大な赤字を抱えている」「語学能力が低い」「海外からの直接投資が少ない」「管理職の国際経験が少ない」「起業家精神が弱い」「高齢化が進展している」「生計費支出が少ない」「年金制度の抜本的改革の遅れ」「文化閉鎖性が強い」等があげられています。そして、科学のインフラという点では世界第2位と充実しているものの、それが企業の競争力や生産性につながっていないと指摘されています。
  これからは税制改革や制度改革を進め、科学インフラを企業の生産性や競争力に結びつける努力が必要になってきます。そうしないと、ますます世界から取り残されてしまうことになりかねません。

  ちなみに国際競争力ランキングの20位までは次のとおりです。
1位 アメリカ、2位 香港、3位 シンガポール、4位 スイス,5位 デンマーク、6位 スウェーデン、7位 オーストラリア、8位 カナダ、9位 フィンランド、10位オランダ、11位 ノルウェー、12位 ルクセンブルグ、13位 ドイツ、14位 カタール、15位 ニュージーランド、16位 オーストリア、17位 日本、18位 マレーシア、19位 アイルランド、20位 中国、
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2010年03月24日

青いバラの開発

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  先日の高等学校の卒業式で、来賓である本学園の松下常務理事から、サントリーが開発した『青いバラ』の話をいただきました。実に感動溢れる内容ですので、今回紹介します。

  〝52期生の皆さんに、お祝いの言葉として『青いバラ』の話をします。
  バラは5,000年前から栽培されていましたが、品種改良が始まってから800年になります。バラというと「赤」が主ですが、今では白・黄・ピンクなど様々な色のバラもできてきましたが、これまで青いバラはできなかったのです。青いバラ、英語でいうとBlue Roseは、辞書に「不可能」を意味すると書いてあります。
サントリーは「やってみなはれ、やらなわかりまへんで」というのをモットーにしている会社ですが、1990年に青いバラにチャレンジすることにしました。このプロジェクトにあこがれてサントリーに入社し、中心となって研究した植物科学研究所の主任研究員 勝元さんに先日会って話を聞いてきました。
  まずひとつの花に数万個ある遺伝子から、青色遺伝子を抽出すること。次にその青色遺伝子をバラの細胞に入れる方法を開発すること。毎日気の遠くなるような実験をします。昨年やっと発売にこぎつけましたが、この間20年の歳月をついやしました。研究所で実験のため咲かせたバラは2万株です。
勝元さんは20年を振り返って、「絶対できるはず」という気持ちを持ち続けたのが、成功の原因だといいます。やっている本人が「無理じゃないかな」と思ってしまったら、もう終り、ひとつ失敗しても失望せず、「これがダメだということがわかった」という点では前進したと考えたそうです。
  そして、成功して、うれしい手紙を受け取ったそうです。
岡山に住んでいる難病と戦う小学生を持っているお母さんからです。娘さんの病気は、現在の医学では完治の方法が見つかっていません。しかし、「不可能の代名詞」といわれた「青いバラ」ができたのを聞いて、娘さんが「いつか必ず治る日が来る」と希望を見いだし、「感動と勇気をありがとうございます」と書いてあったそうです。
  こういう手紙をもらえたということだけでも、青いバラの成功の意味はあったと、私は思いました。
皆さんの人生はこれからが本番です。研究者が「どんなことでも簡単にできることはあまりないが、やってやれないこともあまりありません」と言っていました。自分のやりたいことにチャレンジしてください。
最後に「青いバラ」の花言葉を紹介します。
「夢はかなう」です。
皆さんのこれからの人生に幸多かれと祈ります。ご卒業おめでとう!〟

  私もこのお話を聞いて本当に素晴らしいと感じました。できるかできないかは能力の差というより、強い思い・執念の差であるのは間違いありません。最近はうまくいかないと、すぐにあきらめてしまうという傾向が強くなりつつありますが、何事も粘り強くチャレンジしていくことが大切であると思っています。

2010年03月20日

プラス思考で前向きに生きる (Ⅰ)

  学校改革の一環として「コース制」を導入した最初の学年である52期生が卒業して一ヶ月が経過しました。本校ではこれまでほとんどの生徒が上級学校に進学していますが、これが最終目的ではありません。本校の教育の基本的な考え方は〝将来社会で役立つ人材の育成〟です。これから更に研鑽を積み社会で大いに活躍してくれることを心より願っています。しかし、社会においては与えられたことだけをこなしていくだけでは不十分であり、自分の人生は自分で切り開いていくという姿勢が必要です。
  そのために『プラス思考で前向きに生きる』というテーマで、心がけて欲しいことを取り上げてみました。なお、このエッセンスは先日発刊された学園機関誌『ひばり』に掲載されていますが、これから2回に分けてこの内容を掲載します。

  〝今、世界はまさに新しい時代の幕明けを迎えようとしています。石油を核とする工業化社会からの脱脚、アメリカ一極集中体制からBRICsを中心とした世界多極化体制への移行、地球温暖化をはじめとする環境問題への対応、人口爆発に伴う食料・水・エネルギー対策等課題は山積しています。これらに加えて日本では少子高齢化が進展し年金や医療問題、増加し続ける国家債務の削減等の抜本的な改革が迫られています。また、最近の雇用情勢を見ても非常に厳しいものがあるため、若い人達の中には日本の将来について不安を抱く人も多いのではないかと思います。特に今の高校生以下は全員が平成生まれで、日本の元気な姿を知りません。従ってどうしても縮み思考になりがちですが、これではいつまで経っても閉塞状況は打破できません。これからはプラス思考で前向きに取り組んでいくことが何よりも大切です。
  既に太平洋戦争後60年以上が経過し、戦後の日本のことを知る人も次第に少なくなりつつあるため、ここで戦後のわが国の歩みを整理してみたいと思います。終戦当時の日本の状況は衣・食・住のどれをとっても今とは比べ物にならない厳しいものでした。しかし、国民一人ひとりが何とか国を復興しようという強い思いを持って努力を重ね、世界から奇跡といわれるような目覚しい経済発展を遂げたのです。そしてGDP世界第2位の経済大国としての地歩を築き上げましたが、この間は必ずしも平坦な道のりではありませんでした。オイルショックや円高というさまざまな逆風を受けながら知恵を搾り出し、この難局を乗り切ってきたのです。しかし、この繁栄も束の間、90年代に入り、一転してバブル経済が崩壊し、その後遺症にもがき苦しむことになってしまいました。そして、急速なグローバル化の波に乗り遅れ、やっと回復の兆しが見え始めた矢先にリーマンショックに端を発した世界恐慌により再び経済の停滞が生じてしまったのです。更に中国をはじめとする新興国の台頭により、技術立国としての基盤も揺るぎ始めています。このように考えると、まさに今日本はピンチの真っ只中にいるのかも知れません。
  しかし、冷静に見ると厳しい時代であるからこそ、逆に大きなチャンスが待ち受けているのです。というのは過去の歴史を紐解くと、不況の時に時代を変える画期的な技術革新が起きているからです。このことは、人間は危機になればなるほど智恵を絞り出すということを如実に物語っています。トヨタ自動織機が自動車部を設置したのは1933年、コピー機やポラロイドカメラが開発されたのは1937年(世界恐慌後)、コンピュータの開発は1945年(第2次世界大戦後)、ソニーがウォークマンを発売したのは1979年(第2次石油ショック後)、グーグルの設立は1998年(アジアの金融危機後)、アップルがiPod発売したのは2001年(ITバブル崩壊後)です。このように考えると〝不況は新たな技術が生まれ、人が育つ絶好のチャンスである。〟ということになります。〟
 ≪続く≫

2010年01月09日

日本経済の動向~1~3月の産業天気図

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  日本経済新聞社は3ヵ月に一度、主要30業種の景気予測を『産業天気図』という形でまとめています。これは各業種の生産、販売、操業率、収益等のデータに基づいて、天気を「晴れ」「薄日」「曇り」「小雨」「雨」の5つに分類するというものであり、先日2010年の1月~3月の予測が発表されました。これによると「晴れ」の業種はゼロ、「薄日」は家電とネットサービスの2つ、「曇り」は<鉄鋼・非鉄><電力><化学><プラント・造船><電子部品・半導体><情報><通信><自動車><精密機械><コンビニエンスストア><ドラッグストア><アミューズメント>の12業種、「小雨」は<石油><紙・パルプ><繊維・アパレル><食品・飲料><医薬><貨物輸送><リース><外食><旅行・ホテル><広告><人材派遣>の11業種、そして「雨」は<建設・セメント><マンション・住宅><産業・工作機械><百貨店><スーパー>の5業種となっています。
  今回の結果は主要30業種中29業種が前回の調査(2009年10月~12月)と同じ景気判断となっており、回復傾向は足踏みしています。鉄鋼や化学、電子部品等の業種で生産増が続き、自動車と家電では「エコカー減税」や「エコポイント」等の政策効果によって堅調な販売が続いています。また、一部の業種では中国やインド等の新興国向けの輸出が増加してきていますが、欧米市場の低迷と円高によって収益の改善効果は限定されています。更に雇用への不安に加え、冬のボーナス減で消費者の節約志向は強まっており、百貨店での高額商品やスーパーでの冬物衣料品は販売不振、外食産業も自宅での食事を摂る傾向が定着し苦戦しています。
  このように消費者の低価格志向がますます顕著になる中で、各社は智恵を結集して経営改革を進めているのです。これらの取り組みについては興味深いものが数多くありますので、順次紹介していきたいと思います。

2010年01月05日

日本経済の動向

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  アメリカ発のリーマンショックが瞬く間に全世界に波及し、百年に一度と言われる大恐慌に陥り、日本においても輸出関連企業を中心に業績が悪化しました。これに対応して各企業は開発・生産・販売体制の見直し、コストの削減を加速しました。設備の解消や新規設備投資の抑制、人件費・研究開発費・広告宣伝費の削減等のリストラクチャーによって必死にこの危機を乗り切ろうとしています。また、今後成長が期待される中国やインドに軸足を移す動きも出てきています。しかし、失業者の増加や可処分所得の減少によって国内の個人消費は一向に盛り上がってきません。〝巣ごもり〟という言葉に代表されるように極度の節約志向に陥り、昨今はデフレ経済に陥ることも危惧され始めています。また、今月3日に日本経済新聞社が発表した1月~3月期の主要30業種の『産業天気図予測』を見ても回復に足踏み感が出てきており、先行き全く予断を許さない状況です。
  これまで技術立国として成長を遂げてきた日本が再生するためには早急に企業経営を回復させなければなりません。これが達成できなければ税収が増えることは期待できませんし、いつまでも国債に依存する借金体質から脱皮できないことになります。また、折角大学を卒業しても就職すらできないということでは、日本の若者達に夢や希望を与えることはできません。
  このように考えると、日本にとっての最大の関心事は経済が本格的な回復に向うかどうかということになります。アメリカの一極体制から多極化体制に移行する中にあって、日本経済がおかれている現状を正しく理解し、今後の動向を注視していくことが大切であると思っています。

2010年01月02日

今後の労働力の確保

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  今年も多くの方から年賀状をいただきました。年々定年による退職者が増えてきていますが、まだまだ体力的にも能力的にも第一線での勤務が可能な人が多いようです。しかし、これまでの経験を生かし引き続いて仕事をされている人がおられる一方で、趣味中心の生活を送っておられる人もおられます。あくまで就職は個人の選択ということになりますが、今後急速に高齢化が進展するわが国の状況を見ると医療や年金にかかる財源は確実に増加していきます。そもそも現行の制度は〝人生60年〟を前提に作られており、80年を想定したものではありません。従って、現行制度のままで抜本的な改革がなければ財政的に破綻していくのは明らかです。これを解消していくためには元気な高齢者の雇用を検討していかなければならないと思います。
  現在、日本は働きたくても仕事がないという人が数多く見られますが、一方で農林水産業や介護、医療分野では人手が不足するというミスマッチの状況に陥っています。特に第1次産業においては高齢化が進み後継者が確保されていないという深刻な事態が生じてきているのです。また、第2次・3次産業においても団塊の世代の大量退職によって、これらの人が有するノウハウや技能の継承が極めて大切になってきています。高齢者の雇用を進めると若年者の雇用が圧迫されるという意見もありますが、中長期的に見ると〝労働力が減少する〟という初めての経験をすることになります。
  これからは新規分野における雇用の創出と共に産業構造に見合った労働力の確保を進めていかなければならないと思っています。

2009年12月11日

あったらいいな、をつくっていく~ビジネスの原点

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  アートコーポレーションにおいては〝あったらいいな、をつくっていく〟というのがビジネスの原点になっており、寺田社長は次のような言葉を述べておられます。これは引越し業だけではなくあらゆる業種についても当てはまる内容ではないかと思います。

  いつも先をいくサービスを提案したい。いつも喜ばれるサービスを提供したい。
  ずっと、その思いを大切に歩んできました。
  そして、私たちがこれまで生み出した数々のサービスのアイデアは、お客さまの「あったらいいな」の声にありました。
  お客さまが必要とするサービスを提供するためには、まず、お客さまの声にしっかりと耳を傾けること。
  そして必要なサービスは、すぐに実行すること。
  私たちアート引越センターは、「引越」を専業とする会社として、初めて創業し、そしてなにより引越を 「運送業」としてではなく、「サービス業」として発展させてきました。
  今、その引越を機軸にしながらも、さらに暮らしと関わる企業へ、暮らし方を提案する企業へ、事業領域はますます広がっています。
  業界のリーディングカンパニーであり続けるために。
  これからも「あったらいいな」の気持ちを大切に、お客さまの視点に立ったサービスで確かな満足を提供していきます。私たちのサービスにゴールはありません。

  また、昨日の講演の中でも心に残る言葉が数多くありました。
「世の中の環境に合わせる」「目標の切り下げはしない。切り下げると更にその目標を下回ることになる」「ハードルを超えてきたことが自信につながる」「強い会社とは一人一人が個の単位で強い」「一人一人が会社の顔である」「単に頑張りますというだけでは駄目、具体的な行動計画に落とし込む」等です。
  これらの言葉の中にある〝会社〟を〝学校〟に置き換えると、共通することが多くあるように感じました。今回の研修で学んだことを教育活動に活かしていきたいと思っています。

2009年12月10日

教職員研修会の開催~寺田千代乃氏の講演

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  12月10日(木)、学園の全教職員を対象にアートコーポレーションの寺田千代乃社長から『Small but Excellent ~小さな一流企業を目指して~』というテーマで講演をいただきました。
  本学園では、毎年この時期に外部から講師をお招きして、教職員研修を行なっています。寺田氏は女性経済人として、2002年~2004年は関西経済同友会代表幹事を務められ、2005年5月に関西経済連合会副会長に就任されています。また、本学園の理事として、実社会での豊かな経験をもとに教育活動に対する指導助言をいただいています。
  アートコーポレーションの前身は1972年大東市で設立された寺田運輸株式会社です。同社は第1次オイルショック時の1976年 に引越事業を開始され、アート引越センター事業部を設置、翌年これを独立させてアート引越センター株式会社を設立。その後、競争の激しい引越業界にあって、価格競争よりも斬新なアイディアと「業界初」となるサービスの開発と提供に重点を置いて事業を進めてこられました。主な取り組みを紹介すると、電話帳の最初のページへの表示を狙って社名を「アート」に、電話番号の「0123」や「荷造りご無用」などのキャッチフレーズの採用、全員女性スタッフという女性向けの引越プランである「レディースパック」、作業員が引越先に入る際に新しい靴下への履き替えをする「クリーンソックスサービス」、高齢者向けの「シニアパック」、荷造り・荷解きの代行・手続きをまとめて行なえる「ワンストップサービス」、企業向け転勤支援システム等です。また最近では郵便局での引っ越しサービスの申し込み受け付けやお部屋を〝快適に 広く 美しく〟暮らすための「アートエプロンサービス」、「ホームケアリストサービス」等を導入されています。このように同社は次々と新たなことに取り組むことによって引越のイメージを塗り替え、引越業界を牽引してこられているのです。
  振り返ると、同社は必ずしも順調に成長してきたわけではありませんが、引越し業は「運送業」ではなく「サービス業」であるという原点に立って、さまざまな経営危機を乗り切ってこられたようです。常にお客様の目線に立ち、現場を大切にしてビジネスを展開されている姿を紹介いただき、学校経営においても大変参考になりました。学校においても「人材育成サービス業」という視点に立って教育活動を見直していかなければならないと改めて感じました。
  本日、寺田氏にはご多用中のところ、貴重なお時間を割いてご講演をいただき心より感謝申し上げます。

2009年12月03日

毎日新聞の『記者の目』を読んで

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 現在、予算の無駄を洗い出す政府の「事業仕分け」が連日新聞やテレビなどで報道されています。
本日の毎日新聞の8面には『記者の目』として東京経済部の寺田剛氏の記事が掲載されていますが、税金のあまりの無駄遣いに驚くと共に憤りを感じている人も多いのではないかと思います。
 私が民間企業での勤務を通じて勉強したのは〝徹底したコスト意識〟です。上司からは〝これをやるには人件費を含めてどれだけのコストがかかるのか〟とか〝すべてのコストは製品に反映されるということを忘れるな〟とか〝自分の財布からお金を出すという気持ちでやれ〟ということを常に言われていました。
 仕事には「絶対にやらなければならないもの」「やればそれなりの効果があるもの」「どちらかと言えばやったほうが良いもの」「以前からやってきたから続けていくもの」等さまざまなものがあります。しかし、ヒトやモノ、カネには限りがあるため、すべてのものをやることはできません。そのため、仕事を洗い出して緊急度と重要度に分類し、優先順位をつけます。その上でどれだけのコストをかけてどれだけの成果を出せるのかということを詳細に検討し、やるものを決定します。当然のことながら大きなコストをかけることができずに見送らなければならないものも出てきます。また、仮に予算が同額であれば、新たなものをやるためにはこれまでやっていたものを思い切ってやめるということも必要になってきます。足りなければ借金するということでは、経営が破綻するのは目に見えています。
 個人の家庭で一家の収入をはるかに上回る支出を続けていれば、当然のことながら家計が成り立たなくなるでしょう。これと同じことが国や地方のレベルで起こっているのです。現在の厳しい経済情勢下においては今一度、「仕事の集中と選択をはかる」という視点でシビアにやるべきことを見直す、これまでの延長線上の考え方から脱却して、ゼロベースで検討するという姿勢が必要であると思います。
 これから、本校についても来年度の経営計画を策定していきますが、原点に戻ってすべてのものを今一度見直し、教育内容の充実につとめていきたいと考えています。

2009年11月21日

負の遺産を引き継がない

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  11月20日(金)、人身事故の影響でJR東西線が大幅に遅れたため、日付が変わって校長通信を書いています。
  現在、日本経済はアメリカで発生したリーマンショックの後遺症が尾を引き、まだ本格的な回復には至っていません。企業の業績は、エコポイント制度等の需要喚起のための施策にもかかわらず、自動車や電機産業も未だに赤字から脱却できない状況です。世界の株価を見ても東京市場だけが取り残されており、このことからも海外からの資金が流入していないことが分かります。株価が下がるということは企業や個人の資産が減少するというだけではなく、企業の時価総額が減少することを意味しています。つまり、企業の価値が下がり買収されやすいということになるのです。今は比較的円高基調にありますが、円高に振れると海外企業にとっては更に安い価格で日本企業を買収することができるようになります。
  また、先日発表された日本の国債や借入金債務は864兆円と昨年より約 50兆円近くも増加しました。これは日本人一人当たり約700万円ということになります。一方で個人の金融資産は1400兆円 もあるため全体としてはまだプラスになっています。しかし、税収の大幅減少のため来年度も大幅な国債発行を余儀なくされており、IMF(国際通貨基金)の予測 によると2019年には日本の債務が個人の金融資産を上回るとの試算がなされています。まさに10年後を見据えた経済成長・財政の設計づくりが必要なのです。
  このような膨大な債務をつくったのは我々の世代であり、自らの手で何とか解決していかなければなりません。後の世代に負の遺産を引き継がないという思いで取り組んでいかなければならないと思っています。

2009年10月06日

世界の国々~ブラジル連邦共和国

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  外務省の発表によると、2009年1月現在の世界の国の数は193カ国ということになっています。
これらの国を見ると単一民族というところは少なく、ほとんどが宗教や言語、生活習慣が異なる多くの民族で構成され、一つの国家を形づくっています。しかし、過去の歴史を紐解くと相次ぐ戦争の結果、国境は絶えず変わってきていますし、現在でもいたる所で領土をめぐる紛争や民族対立が起こっています。従って、それぞれの国の概要を述べる際には、縦軸としての歴史と横軸としての国際社会における政治や経済の現状をしっかりと把握しておくことが大切です。
  ブラジルは1500年にポルトガル人のペドロ・アルベス・カブラルによって発見され、16世紀半ばにはポルトガル国王の直轄地となりました。その後、砂糖産業の隆盛に伴いアフリカからの黒人奴隷が流入され、更に18世紀に入って、金鉱やダイヤモンドの発見により空前の繁栄を遂げますが、ナポレオンのポルトガル侵攻により、王室がブラジルに移転を余儀なくされます。その後、帝政として独立しましたが、やがて共和制や軍政に移行しました。この間、19世紀の終わり頃から大量の自動車が生産されるようになり、そのタイヤの原料として天然ゴムブームが起こりますが、これも長くは続かず人工ゴムの発明等で衰退してしまいます。そして、1985年からは民政が復活しましたが、政策の失敗からハイパーインフレーションを招き、ブラジル経済は一時大混乱に陥りました。
  現在はBRICsの一翼として、GDP(国内総生産)は1兆8000億ドルを超え世界第8位、ラテンアメリカ最大の経済大国になりました。また人口は1億8千万人、国土面積も851万平方キロと共に世界5位であり、国土の約4割を占めるアマゾン森林地帯は日本の13.5倍に及んでいます。
  品目別の生産高を見ると牛肉は世界2位、鶏肉は3位、砂糖は1位、大豆は2位、鉄鉱石は2位となっており、世界で唯一商業ベースでのエタノール自動車の生産にも成功しています。このようにブラジルは大きな潜在能力を有しているのです。移民を通じて日本との関係も深いブラジルの動きをこれからも注目していきたいものです。

2009年09月22日

高齢化社会を乗り切る

 総務省が「敬老の日」に併せて発表した推計人口によると、
    ①総人口は1億2756万人(昨年比12万人減)
    ②65歳以上は2898万人(昨年比80万人増、総人口比22.7%)
      この内、女性の高齢者の割合は25.4%と4人に1人
    ③75歳以上は1364万人で総人口に占める割合は10.7%と10人に1人
    ④15歳~64歳の生産年齢人口は8163万人(昨年比76万人減)
    ⑤15歳未満人口は1707万人で13.4%と引き続き減少、 
この結果、65歳以上の高齢者人口が初めて15歳未満の人口を上回るということになりました。
 現在、日本は世界の中でも類を見ないスピードで高齢化が進行し、年少人口の比率は世界最低の水準になっています。この原因は出生率(しゅっしょうりつ)が減る一方で平均寿命が延びて高齢者が増えているからです。振り返ると、1950年代前半は〝人生65年の時代〟でしたが、1990年代後半からは〝人生80年の時代〟になりました。更に2025年には〝人生85年の時代〟になると言われています。このように21世紀前半の日本は労働人口が減少する一方で老年人口が増大し年金・医療・介護といった負担が増大して勤労世代の生き方を圧迫する時代になります。また、このままでは経済活動が停滞から縮小に向かう恐れもあります。早急に平均寿命が55歳という時代に構築された年金や医療等の制度を抜本的に見直すと共に思い切った経済の活性化対策を講じていく必要性を痛感しています。

2009年09月15日

日本のエネルギー事情~部門別の消費の実態

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  わが国のエネルギー消費は大きく3つの部門に分けてとらまえることができます。家庭や職場で直接エネルギーを利用する「民生部門」、ヒトやモノの輸送にエネルギーを利用する「運輸部門」、モノの生産にエネルギーを利用する「産業部門」です。この3つの部門におけるエネルギーの消費量を第1次オイルショック時(1973年)と比較すると民生部門は2.5倍、運輸部門は2.1倍、産業部門は1.0倍ということになっています。これを見る限り、産業部門における省エネ対策は民生や運輸部門に比較すると進んでいることが分かります。そして、エネルギー消費の割合は石油ショック時に 産業:民生:運輸が4:1:1であったのが、2:1:1に変化してきています。
  今回の温暖ガス25%削減という方針に対して、産業界では非常に高いハードルであるという意見が数多く出されていますが、民生や運輸部門における取り組みを強化することが大切です。民生部門は家庭部門と業務部門に分かれますが、家庭部門では第1次オイルショック時に比べて2倍、企業の事務所・ビル、ホテルやデパート、学校などの業務部門は3倍近くのエネルギーを消費しています。
また、運輸部門には、乗用車やバスなどの旅客部門と陸運や海運といった貨物部門がありますが、鉄道や海運、バスが減り、乗用車やトラックが増加してきています。この結果、エネルギー消費量も年々増えてきたのです。
  また、石油ショックの後、省エネルギー型の家電商品や自動車などの開発が進み、次第に家庭に普及しましたが、より利便性、快適性を追求するライフスタイルの変化によってエネルギー消費は増え続けているのです。これからは国民一人ひとりが環境問題を自分自身のこととしてとらえ、自らのライフスタイルを見直すことが何よりも大切なのではないかと思っています。

2009年08月31日

国家百年の計を打ち立てる

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  世界各国からも注目されていた衆議院選挙は民主党が300を越す議席を獲得し圧勝するという結果になり、自民党は1955年の結党以来、初めて第1党の座を明け渡す歴史的な敗北を喫することになりました。この選挙結果についてはマスコミ各社がさまざまな分析を行なっていますが、現状のままではどうにもならないという民意の反映であると思います。
  振り返ると、わが国は第2次世界大戦後の苦難期をなんとか乗り切り、その後国民の総力を結集することにより世界の国々からも奇跡と絶賛される経済発展を遂げました。そして1980年代、日本は世界で一人勝ちとまで言われるような絶頂期を迎えたのです。今思えばこの時に将来の青写真いわば国家百年の計を描くべきだったのですが、うまくいっている時にはどうしても安易になりがちです。目先のこと、自分のことを中心に考えるということに終始してしまいました。やがてバブルが崩壊して税収が減少することになっても、歳出を絞ることなく、いたるところで予算のバラマキが行なわれることになりました。そして、足りない部分は赤字国債で賄うというパターンが定着することになり、今やこの累積金額は870兆円という膨大な金額にのぼっているのです。また、失業者も増加の一途を辿っています。
  一方、日本には環境を中心とした新技術が続々と生まれてきています。これらを活用して新たな産業を育て、経済を立て直すことによって世界をリードしていかなければなりません。そのためには政府が長期的な展望に立った〝国家百年の計〟を打ち立てると共に国民一人ひとりが自分のことだけを考えるのではなく痛みを分かち合うという気持ちを持つことが大切であると思っています。

2009年07月15日

人口爆発と経済発展

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  環境問題には、食料、水、エネルギー、ゴミ、温暖化、異常気象、酸性雨、砂漠化、河川・海洋・土壌の汚染等さまざまなものがありますが、これらの底流にあるのは急激な人口増です。しかし、日本は人口が減少してきているため、世界の人口も減少していると思っている人が案外多いのです。

  現在の世界の人口は既に68億人を超えていますが、この推移を見ると200年間に6倍以上、100年間に約4倍になっているのです。これを10億人単位で見ていくと、●1802年・・・10億人、(○1900年・・・17億人)、●1927年・・・20億人、●1960年・・・30億人、●1974年・・・40億人、●1987年・・・50億人、●1999年・・・60億人 ということになります。とりわけ1960年以降、人口が10億人増えるのに要する年数が14年、13年、12年と短縮されてきていることが分かります。
  一方で、この100年間の世界経済を見ると先進国において急速な発展を遂げ、これらの国の人々は豊かな暮らしを享受するようになりました。しかし、近年BRICsをはじめとする国々が急速な経済発展を見せ始めました。BRICsというのは広大な国土と人口を有し、今後大きく成長が見込まれる国として注目を集めている国の頭文字を取ったもので、B:ブラジル R:ロシア I:インド C:チャイナ〔中国〕の4国を指しますが、とりわけ中国の発展は目覚しく、間もなく日本を抜いて世界第2位の経済大国になるのは間違いありません。これに続くものとしてVISTA(ベトナム・インドネシア・南アフリカ連邦・トルコ・アルゼンチン)も注目を集めています。そして、これらの国々が今後経済発展を続け生活水準が上がると、ますます環境問題がクローズアップされることになります。
  振り返ってみると、20世紀は大量生産、大量消費、大量廃棄という経済モデルが確立された時代であり、これまで何億年何千万年もかかって蓄積されてきた貴重な資源の大半をすべてこの100年間余で費消してしまったと言えます。この経済モデルがいつまでも継続できるはずはありません。
  まさに今は転換期であり、新たな枠組みを構築しなければならなくなってきているのです。我々はまずこのような現状をしっかりと理解しておくことが大切であると思っています。

2009年07月08日

高校全校朝礼~チキンラーメンの開発者

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  7月8日(水)、高校の全校朝礼で次のような話しをしました。
  〝皆さんは、インスタントラーメンを発明した人を知っていますか。安藤百福さん、日清食品を創った人です。この人はこの近く池田市に住んでいました。生まれたのは、1910年(明治43年)日露戦争が終った頃です。小さい時に両親を亡くし、繊維問屋を営む祖父母に育てられました。その後、自分でメリヤス会社を作り事業を拡大しましたが、太平洋戦争に負けてすべての物を失ってしまいました。しかし、これにめげるのではなく製塩業・百貨店をはじめさまざまな事業を行ないました。
  その当時、梅田の駅裏で一杯のラーメンのために、多くの人が寒さに震えながら長い列をつくるのを目の当たりにし、食物への関心が高まりました。戦後、アメリカから支援物資として大量の小麦が日本に送られてきました。そして、これを使ってパンを作ることを政府は奨めたのです。安藤氏は“日本本来の麺をつくるべきではないか”と厚生省働きかけましたが、全く耳を貸してもらえず、最後には“そんなに言うなら、あなたがやれば良いのではないか”という答えが返ってきました。自分でやってみたいと考えましたが、自分の事業が忙し過ぎてやることはできませんでした。
  ところが大きな転機が訪れることになります。名前だけを貸して欲しいということで理事長に就任していた信用組合が倒産したのです。その結果、池田にある自宅以外はすべて失ってしまったのです。ここから安藤氏の戦いが始まります。自宅の裏の6畳くらいのトタン屋根の小屋でラーメンづくりを始めたのです。おいしくて保存がきき、簡単に食せて、安全で安心なラーメンをつくることを目指しました。なかなかうまくいきませんでしたが、ある時奥さんが天ぷらを揚げるのを見てヒントを得ます。しかし油であげるだけではコクのある味にはなりません。そしてチキンエキスやしょう油を麺にしみ込ませるために大変な苦労を重ねて、1958年ついにインスタントラーメンを完成させました。1袋35円、熱湯を注いで、3分間で美味しいラーメンができあがります。3年後には約1億5千食というとてつもない市場になりました。安藤氏は日本ラーメン協会を設立して製法特許を公開しました。会社は3年間で従業員は30人から1000人になり、5年間で株式を上場しました。
  やがて海外進出を試みます。しかしどんぶりとはしのない国にどうしてラーメン文化を伝えるのか。その答えは現地のディーラーが紙コップで試食したことで、カップ麺にするというものでした。そしてふたを密閉性の高いものにし、発泡スチロールの容器にしました。この結果、今では多くの国で食されています。
そして、〝少年少女に夢をおくりたい〟〝七転び八起きの精神力で苦境に陥った人を励ましたい〟という思いでインスタントラーメン発明記念館を池田市に作りました。創業当時、安藤氏が明け方まで開発に取り組んだトタン屋根の作業所が展示されており、実際に粉をこねてチキンラーメンを作る「手作り体験コーナー」もあります。
  何事にもくじけず果敢に挑戦すれば、必ず道は開けていくと思います。〟

2009年07月01日

中学校全校朝礼~年商一億円の車内販売員~

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  7月1日(水)、中学校の全校朝礼を行なうため、職員朝礼が終わって体育館に直行すると既に全員の集合が完了しており、生徒達の成長振りを見て実に頼もしく感じました。このように規律ある集団行動ができるということはすべての成長に繋がっていくものと確信しています。
 
  部活動の表彰の後、次のような話をしました。
  〝昨日のアロージャズ・コンサートはいかがでしたか。素晴らしかったですね。皆さんも大いに盛り上がりましたね。17名の奏者の皆さんは恐らく自分の仕事が好きだと思います。将来、皆さんは色々な仕事に就くことでしょうが、「自分の仕事が好きで人に喜んでもらえる」ということが大切です。

  今日は山形新幹線つばさ号の社内販売員である『斉藤 泉さん』の話を紹介します。つばさ号は満員になると400人、山形から東京まで片道3時間半、往復7時間800人の市場ということになります。ワゴン販売員の平均売り上げは8万円。このような中で斉藤さんは30万円、平均の3.75倍の売り上げを続けています。この額はセブンイレブンの一日の売り上げの2分の1に相当します。どうして同じ条件でこのようなことが可能になるのでしょうか。
  斉藤さんの出勤時間は乗り込む電車が入線する1時間以上前です。まずその日の天候や客層を確認します。寒ければホットコーヒー、ビジネス客が多ければ缶ビール、お年よりは夕食時間が早いのでお弁当、家族連れが多ければお菓子やジュースを準備します。品揃えができたらワゴンの陳列を行ないますが、売れ筋のお菓子は前面に、通路のどちら側のお客にも見やすくするために左右対称に、売れ筋ではないものは内側に、します。発車すると最初の一往復で頭の中に顧客リストを作成し、お客の目の動きによって購入確率を見極めます。おつり入れのポケットを工夫し500円から10円までの4種類の硬貨を瞬時に取り出せるようにして、販売にかかる時間をぎりぎりまで短縮、最高で100分間に弁当112個を販売、片道3時間半の運行時間中に、並みの販売員なら三往復がやっとのところを五往復します。 また、以前クレームの多かった《すき焼き弁当》に地元特産の温泉卵を入れることを提案することにより、月500個を7000個、14倍に引き上げました。
  斉藤さんが素晴らしいのは、お客との出会いを大切にし、旅行を楽しんでもらえるということを心がけているということです。皆さんも是非相手のことを考えて行動できるようになってください。そうすれば必ず社会で活躍できるようになると思っています。〟

2009年06月24日

高等学校全校朝礼~ユニクロの取り組み

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  6月24日(水)、約1ヵ月ぶりに高校の全校朝礼を行ないました。今、世の中は大きく変わりつつありますが、マスコミ等を通じて届けられる情報には将来に希望を持たせるような明るいものがあまりにも少ないように感じています。このような中で生活していると、生徒達はどうしても将来に対して不安を感じてしまうことになってしまいます。これでは自らの高い目標を設定し、その実現に向けて努力していこうということには繋がりません。そのため、本日は生徒達に元気をつける意味もあって新たな取り組みによって注目されている「ユニクロ=ファースト・リテイリング」についての話を紹介しました。
  〝現在、流通業界は大きな変化の波が押し寄せてきています。衣料関係ではデパートやスーパーが大苦戦している中で、2桁成長という絶好調な会社があります。それは「ユニクロ」です。ユニクロの略称は「UNI-QLO」ですが、当初はユニーク・クロージング・ウェアハウス〟ということで「UNI-CLO」でした。ところが、香港に現地法人を設立した際、会社登録の書類を書き間違えてしまったのです。ユニクロの本社は東京や大阪ではなく山口県の山口市にあります。
  会社のスローガンは『服を変え 常識を変え 世界を変える』、そして先端材料で安くて良いものをつくり世界のトップ企業を目指す、というものです。これを実現するために、商品企画は日本、物づくりは中国、大型店舗による豊富な品揃え、原材料の100%買取りによるコスト削減等を実施しました。これだけでは単に安いということにしかなりませんが、お客様に満足していただく商品をお届けするために「素材メーカーと製造小売業との境界線を超えた商品開発体制」を確立したのです。そして、東レと共同で『ヒートテック』という従来にない商品を開発しました。綿100%が主流の下着市場に、保温性(アクリル)、保湿性(レーヨン)、速乾性(ポリエステル)、フィット性(ポリウレタン)、抗菌性のある新素材を投入したのです。この結果、昨年度は秋冬物だけで2800万枚を完売しました。また、全国の750店舗からは直接お客様の声が届くことになっており、ヒートテックの企画やデザインは女性中心のチームが行なっています。そして、この度、この取り組みが『日本マーケティング大賞』を受賞しました。
  過去の延長線上の取り組みからの脱却、他社との差別化・特長づくり、お客様第一の考え方は、すべてのことに当てはまると思います。参考にしてください。〟

2009年01月28日

商品づくりのポイント

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  1月28日(水)、中学の全校朝礼で商品開発の具体例として『温水洗浄便座』の話をしました。
 現在、温水洗浄便座を使っておられる家庭は年々増えてきており、1980年の発売以来、累計販売台数が2千万台を超える商品になってきていますが、これまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。当初(1960年)はアメリカから病院向け、医療用や福祉施設用に輸入されていました。その後東洋陶器(現TOTO)が商品化しましたが、販売価格が高い上に湯温が安定しなかったこともあって、なかなか売れませんでした。このため商品に改良を加えた後、新聞や雑誌、TV等を通じて宣伝しようとしましたが、品位が下がるということで受け入れてもらえませんでした。しかし、熱意を持って何とか関係者を説き伏せ、ついに「おしりだって洗って欲しい」というキャッチフレーズでTVコマーシャルを流したのです。それも夕食の時間を狙って行なったのです。これを見た視聴者からは当然のことながら「楽しい夕食の団欒の時間におしりのCMを流すとは何事だ」というクレームが殺到しました。これに対してTOTOは「人間にとって排泄という行為は食事と同様尊いものであり、誇りを持ってこの商品をお奨めします。」と答えました。
  その後、紆余曲折を経て乾燥、暖房、消臭、抗菌、省エネ、着座センサー等の機能が次々と付加され、今では家庭の必需品になっています。
  商品がお客様に受け入れられるためには、「安心」「安全」「快適」という視点を持ち、何よりもお客様の不満を解消するということが不可欠なのです。このように商品づくりの基本は相手の立場に立つことであり、普段からこういう姿勢を持つことが大切です。一度身近にある色々な商品をじっくりと観察してください。

2009年01月21日

コンビニが百貨店を抜く

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  1月21日(水)、高校生対象の全校朝礼を行ないました。最近は日本の経済の低迷が顕著になってきているため、明るい話題が少なくなっています。日本の若者はこれまで経済が比較的安定している時でも、他の国の若者に比べて将来に対する夢や希望を持つ割合が低いという結果が出ていますが、このままでは更に悲観的に考えるようになるのではないかと危惧されます。従って、考え方や行動を変えることによって、新たな道が開かれるということを伝えていくことが大切であると思っています。朝日新聞の一面トップには『コンビニ 百貨店を抜く』という記事が掲載されており、これをテーマに話をしましたので若干補足も加えてその概要を紹介します。
  〝最近、消費が低迷し、百貨店やスーパーの売上げが減少する中でコンビニが業績を伸ばし、ついに百貨店の売り上げを抜きました。業界トップのセブンイレブンによるコンビニが初登場したのはオイルショックが起きた1974年で、まだ35年しか経っていないことになりますが、当初は否定的な意見が大半でした。
  コンビニのコンセプトは「いつでも(時間)」「すぐに(立地)」「何でも(品揃え)」という3つの便利さの追求です。これを可能にしたのはPOS(販売時点の情報管理)システムです。つまり、レジで10個のボタン(男女・年齢別)を操作することによって何時・どの商品が・どのようなお客に・どれだけ売れたかが把握できるようになっているのです。また、品切れや売れ残りが極力少なくなるように 各店舗には休日の天候・行事予定・商品情報がタイムリーに届けられるようになっています。更にセブン銀行のATMが設置されており現金が引き出せるほか、電気料金、電話料金、生命保険料、NHK受信料等の振り込み、宅急便の取り扱いもできます。また、温かいおでんやクリスマスケーキ、まるかじり寿司、御節料理の販売等も手がけるようになってきました。この結果、当初は見向きもされなかった50歳以上の客層も20%を超えたようです。不況は新たな取り組みのチャンスです。皆さんも是非、視点を変える、差別化をはかることによって新たな道を切り開いていってください。〟

  現在、コンビニの店舗数は全世界で3万店舗を超え、今後ますます増加することが予想されます。一方で夜間電力の使用や食品の廃棄等の課題も指摘されてきています。これから当然経営戦略の見直しも必要になってくるでしょうが、何事も常に時代の流れをしっかりと受け止め新たな取り組みを行なうことの大切さを感じています。

2008年12月28日

日本の現状を把握する

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  過去の歴史を紐解くと、時計の振り子のように一方に振れると必ず逆の方向に戻そうとする力が働きます。日本はこれまでは多くの面での綻(ほころ)びを部分的に修正しながら何とか乗り切ってきましたが、このやり方では根本的な解決にはならないということは多くの人が認識しているはずです。人間に例えれば、慢性的な病気のために徐々に体が蝕まれてきており、投薬では健康を取り戻すことが難しい状況になってきているということです。健康回復のためには中長期の計画を作り、抜本的な生活の見直しをはかっていかなければなりませんが、先延ばしにしているというのが現状です。
  しかし、今回の世界同時不況はさまざまな国において、これまでのやり方を抜本的に見直さなければならないという事態を招くことになりました。日本も例外ではありませんが、今はこれからの日本をどういう方向に導くのかを考える絶好の機会であると考えるべきではないかと思います。言い換えると、これまで日本が進んできた道を今一度振り返り、グローバルな視点に立って課題解決の方向を明確にしなければならないということです。
  20世紀の日本の動きを振り返ると、終始欧米へのキャッチアップを目指し物質面での豊かさを追求してきたということになります。官が民を指導し、中央が地方を指導し、閉ざされた企業グループを構成することによって、経済成長と生活水準の向上をはかってきたのです。この結果、「〇〇化」と呼ばれるさまざまな変化が生じました。思いつくままに取り上げると、工業化、都市化、核家族化、高学歴化、情報化、少子高齢化、グローバル化等です。まずこれらの現状をしっかりと把握した上で解決のための方向付けをしておくことが大切です。

2008年12月27日

〝変える〟

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  今年はアメリカでのサブプライムローンに端を発した金融問題が全世界に飛び火し、ウクライナやアイスランド、ハンガリー等は国家破綻の危機に見舞われることになりました。また金融機関が資金不足になり倒産の恐れが出たため、各国政府がこれらを救済するため相次いで公的資金を注入する等の対応に終われました。更にこれが実体経済に波及し個人消費が大幅に減少するという結果になり、アメリカでは代表的な基幹産業である自動車産業が壊滅的な状況に陥りました。
  当初、日本は比較的影響が小さいのではないかと思われていましたが、円高と相まって輸出企業の経営が急速に悪化し、トヨタ・日産・ホンダ等の自動車メーカーやソニー・パナソニック・キャノン等の電機メーカーは相次いで大幅な下方修正を発表するにいたっています。特に優良企業の筆頭であったトヨタ自動車が創業以来の赤字に陥るとのニュースは産業界に大きなショックをもたらすと共に今回の不況の深刻さを裏付けることになりました。〝天国から地獄へ〟という言葉がありますが、わずか数ヶ月の間にこのような状況になるとは経営者の誰もが予想できなかったのではないかと思います。
  かつて日本もバブル経済が崩壊し、立ち直るために10年という長い歳月を要しましたが、今回はアメリカやヨーロッパ、日本だけではなく近年経済成長著しい新興国にまで広がり、まさに100年に一度の世界同時不況という様相を呈しています。そして、この状況は短期間で解消できるほど単純なものではないようです。
まさに、今日本においては国も地方も企業も個人もこれまで取り組んできたすべての枠組みを変えることが必要ではないかと思っています。
  この休暇中、〝変える〟というテーマで色々なことを取り上げていきたいと考えています。

2008年12月21日

原点に戻り自らを変える

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  今年の世相を現す漢字は『変』ということになりましたが、辞書でこの変という字を引くと「かわること。かえること」「非常の出来事、事故、事件」「普通でないこと。異常。奇妙」という意味が記載されています。
  これらの意味は通常それぞれ別個に使用されるものですが、今年はさまざまな分野でこの3つの意味すべてに当てはまることが起こりました。
  とりわけ経済について見ると、今年くらい大きな変化が起きた年はなかったと思います。サブプライムローンに端を発したアメリカ発の金融危機という事件は世界各国の実体経済を揺さぶり始めました。日本経済も年の前半は石油を初めとする資源の暴騰から後半は一転して急落、企業の業績も上半期は絶好調と言える業績から下半期は赤字に陥る等異常な状況が発生しました。
  これまでの戦後の経済を見ると二度にわたる石油ショックや円高、バブル崩壊等不況と言われる局面も何度かありました。〝備えあれば憂いなし〟という言葉がありますが、企業においても家庭においてもある程度の危機管理はしていたはずです。しかし、今回はこれらをはるかに上回る規模であり、急激な変化であったため対応できていないのが現実です。
  このような時には過去の延長線上で考え行動するのではなく、原点に戻ってすべてのことを見直していくことが何よりも大切です。思い切って自らを変えるという姿勢でこの難局を乗り切っていきたいものです。

2008年11月26日

全校朝礼~グローバル化を目指す企業

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  11月26日(水)、高校の全校朝礼でマクドナルドの話をしました。
〝前回、靴のセールスマンの話(発展途上国で靴が売れるかどうかという話)をしましたが、事業を伸ばしていくためにはグローバルな展開が必要です。
  ところで、今世界の120を超える国で販売されているものがありますが、何かわかりますか。それはマクドナルドのハンバーガーです。今ではハンバーガーと言えばマクドナルドというように、マクドナルドはハンバーガーの代名詞になっていますが、この成り立ちを紹介します。1940年、今から実に68年前になりますが、カリフォルニアでマクドナルド兄弟が店を開いていました。そこにミルク・シェイクのミキサーを販売するセールスマンのクロック氏が訪れました。二人の仕事ぶりを見ていると実に手際がよく短時間で多くのお客様を捌いています。クロック氏は感心して、このシステムをフランチャイズ方式にしてはどうかと相談を持ちかけました。そして、売り上げの0.5%を支払うという契約をしました。その後、クロック氏はマクドナルド兄弟から全ての権利を譲りうけチェーン店を広げていきました。この契約を続けていれば今では年間180億円の収入があることになります。マクドナルドは色々な戦略を立てています。子どもを含め家族をターゲットにする。待ち時間を極力短くする。そのために工場で集中的にハンバーグを作り、店では焼いたり揚げたりという簡単な作業をするだけにし、マニュアルに従って誰でも出来るようにする。また、アメリカでは低所得者が食べる低級な食品というイメージが定着してきたため、海外での販売を伸ばすことを目指す。そのためには牛肉を食べないインドではチキン・バーガーやベジタブル・バーガーを、フィリピンではトマトケチャップの代わりにバナナケチャップを使ったバーガーを、その他豚肉や魚を使ったバーガーを作る等国や地域にあった商品開発を行ないました。
  このように事業を伸ばしていくためにはグローバルな視点が必要ですが、日本には世界に誇れるさまざまなものがあります。これらをグローバル展開していけば大いなるビジネスチャンスがあります。やり方次第ではドキドキ、ワクワクする時代になると思います。大きい目標を持って取り組んで欲しいものです。〟

2008年11月13日

世界の動きを知る

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  これから日本が避けて通れないトレンドとして「情報化」「グローバル化」「少子高齢化」といったことがあげられます。このうち、少子高齢化というのは日本独自の問題ですが、情報化とグローバル化は表裏一体のものとして、今後ますます加速されてきます。しかし、気になるのは国民全体が内向きになり、自分の回りのことに目を奪われすぎて、これから世界がどのように動いていくのかについては関心が薄くなっているということです。
  現在の政治を見ていても、お互いに批判の応酬に終始し、協力して日本をどのような方向に導いていくかという道筋は見えてきません。このままではますます世界の流れに乗り遅れ、気がついた時には取り返しがつかないという結果になりかねません。
  日本はかつて世界の中で一人勝ちと言われるくらいの経済発展を遂げましたが、バブル崩壊とグローバル化への対応遅れのため国際的な地位が低下してきました。そして、もがき苦しみながらやっと経済を立て直し、ほっとしたのも束の間、再びアメリカに端を発した金融危機により、実体経済まで影響が広がりつつあります。それでも世界の国々の中では日本の経済・金融の状況は比較的打撃が少ないのです。今、世界全体を見るとアイスランドやセルビア、ウクライナ、ハンガリー等、国家そのもの破綻や欧米の巨大企業が相次いで倒産の危機に直面しています。14日からはワシントンで世界の首脳が集まり、金融サミットが開催されますが、是非この成り行きを注目しておいて欲しいと思っています。

2008年11月12日

高等学校全校朝礼~誰もやらないことをやる

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  11月12日(水)、外部の模擬試験等のため開催できていなかった高校の全校朝礼を4週間ぶりに行ない次のような話をしました。
  〝日本では全労働者のうち約8割が企業に勤めているので、皆さんの中の大半は将来企業で働くことになりますが、今日は靴を製造している企業での興味あるエピソードを紹介します。この企業のトップは何とか売り上げを伸ばしたいと考え、ある発展途上国で靴が売れるかどうかを調査するように二人のセールスマンに指示しました。一人は「靴は売れません。この国で靴をはいている人は誰もいません」と答えました。ところが、もう一人は「絶対に売れます。潜在需要は実に大きいものがあります。わが社の製品であればきっとこの国に受け入れらます」と全く逆の答えをしました。最終的には、この国で靴を販売するということになりましたが、人々の所得が増えるにつれて大きく売り上げを伸ばすことができるようになったそうです。
  今、世界の人口は1日に約20万人ずつ増えてきていますが、特にBRICsといわれる国々が注目を集めています。この中のインドはこれまで人口は多いけれども貧富の差が激しく経済力という点では今一歩であると見られていました。しかし、最近の成長ぶりは目を見張るものがあります。このインド市場に早くから着目して手を打ってきたのがスズキ自動車です。インドにおける自動車の占有率は50パーセントを越えており、トヨタも日産もホンダも及びません。スズキの鈴木修会長の口癖は「人と同じことはやらない。やるなら世界一を目指す」というものです。また、ロシアでは日本のメーカーの中で三菱自動車が健闘しています。皆さんは、自分達の将来は暗いと思っていませんか。これからはやり方次第でいくらでも事業を伸ばすことができますが、そのベースとなるのは確かな基礎学力です。どうか皆さんは目標を達成するための勉強をしっかりとやって欲しいものです。〟
  高校生になると、徐々に自分の将来の進路についても考えるようになってきます。今後、高校の朝礼では少しでも進路選択のヒントになるような話をしていきたいと思っています。

2008年09月28日

企業から見た科学技術力の課題

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  昨日、講演いただいた楠見雄規氏は松下電器産業のコーポレートR&D戦略室の室長であり、産学連携推進センター所長も兼務されています。R&DというのはResearch & Developmentの略で研究開発ということです。同社では「お客様の満足」という視点に立ち、それをテクノロジーで実現するために「指きたすネットワーク社会の実現」と「地球環境の共存」という事業ビジョンを掲げて積極的にR&Dイノベーションに取り組んでおり、その要となるのがコーポレートR&D戦略室です。それだけにお話の内容は、日本におけるグローバル企業が抱える課題や今後の日本の進むべき方向について核心をついたものが数多くあるように感じました。
  〝日本の科学技術競争力の推移を見ると、研究投資額はそれなりのレベルにある。しかし、民間頼りの結果、目先の成果への投資偏重ということになっており、世界に先立つ技術が育っていない。他の研究者から参照されるレベルの研究が少なく人材が育っていない。このまま国内人材中心でグローバル成長ができるかどうかは疑問である。日本はこれまで高度な科学技術力によって産業立国としての地位を築いてきたが、まさに危機的状況になりつつある。ゆとり教育や大学独立法人化(国費削減+民間依存)の施策は科学技術力の低下に繋がっているのではないか。〟
  更に、日本の教育への期待として多くの話をいただきましたが、この内容については、改めて紹介したいと思います。
                          ≪続く≫

2008年08月03日

カナダの概要~広い国土

  世界には190を超える国がありますが、それぞれの国の概要については知らないことが多いようです。私自身も前回カナダに行ったのは10年前、それも滞在期間はわずか11日間という事だったのであまり参考にならないように思います。それで、今回の訪問にあたってカナダの概要について調べてみました。
  カナダはイギリス連邦を構成する1自治国であり、10の自治州と3つの准州より成り立っている。国土は997.1平方キロメーターで世界第2位であり、日本の実に27倍もあり、アラスカ(アメリカ領)を除く北アメリカ大陸の北半を占めている。しかし、ほとんどが人の住めない土地であり、耕地や居住地は南のアメリカとの国境沿いや五大湖沿岸のベルト地帯の11%に集中している。人口は3200万人であり、日本の約4分の1であるため、日本人にとってはすべてのものが広くゆったりしているように感じられる。
南はエリー湖中のペレー島の北緯41度41分、北はコロンビア岬の北緯83度6分であり、国土の大部分は山地や岩石、極地となっており、開発された地域は国土の3分の1以下である。
  気候的にはかなり厳しく、1月の平均気温が零度以上となるのは、バンクーバー付近のみである。中部から北部にかけては広大な針葉樹林やツンドラ氷河地帯が広がっている。地形は西部太平洋のロッキー山系と東部大西洋のアパラチア山系の両者にはさまれた広大な地域で耕地・平原・低地の3地域に大別される。
  有名な五大湖にしても、日本の面積の80%がすっぽりと入ってしまう大きさであり、オンタリオ湖ひとつとってみても、琵琶湖の実に30倍近い大きさであるから湖というよりは大海という表現の方がぴったりするようである。

2008年04月06日

凡事徹底~伸びる会社の条件

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  先日、社会で活躍されている人は、凡事を徹底されているということをお話しましたが、これから何回かにわたって実例を紹介したいと思います。
  最初は、私が以前勤務していた松下電器産業の創業者である松下幸之助氏に関するエピソードです。松下氏はその会社が伸びるか伸びないかを見分ける方法として三つの尺度を持っておられました。
一つ目は〝「おはようございます。いらっしゃいませ。」という爽やかな挨拶が返ってくるかどうか〟、二つ目は〝整理整頓がゆきとどいているかどうか〟、三つ目は〝トイレが美しく掃除されているかどうか〟です。これらは、ごくあたり前のことであり、会社の経営とはあまり関係ないように思われがちですが、これらが徹底している会社は不思議と良い業績を残しています。
  爽やかな挨拶は、人に好印象を与えますし、会話が弾むことになります。また、整理整頓がしっかりと行なわれており、トイレが美しいということは、会社の隅々まできっちりと目が行き届いていることを示唆しています。このような会社は販売、売掛金、仕入れ、在庫、生産、品質、資金管理が正確になされていますし、何と言ってもこれらの仕事にたずさわっている従業員の教育に注力されています。
  これは、別に会社に限ったことではなく、病院や役所、学校についても言えることではないかと思っています。