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親孝行・やってみなはれ

2021年12月17日

2022年を目前に

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 1953年に発表されたSF小説「華氏451度」は、本を所持することが禁じられた未来世界を描くディストピア小説ですが、作品中に1か所、「2022年」という年が節目として出てきます。小説の舞台はさらにその後の世界で、人々は耳に巻貝のような器具を嵌め、壁から流れる映像と音に浮かれつつ、苦しいことには目を向けず考えることからは遠ざけられ、記憶すら曖昧になっていきます。1950年代はアメリカで一般家庭にテレビが普及していった時期であり、のちに作者のレイ・ブラッドベリは、「テレビが本を読むことへの関心を失わせていく物語だ」と語っています。現実が小説を追い越して古く感じる描写もあるものの、作者が危惧している状況は形を変えて現在にも当てはまります。中学生・高校生の皆さんには、読んで心地よい本だけではなく、居心地が悪くなる本(直視したくないことが書いてあるに違いない)、難解な本(力尽きて脱落しても怪我はしない)、不思議な本(よくわからないことを暫く心の中にぶら下げておく事にも意味がある)、心を動かし考えながら自分一人の実体験を超えた数多くの経験を吸収してほしいと思います。2022年3月竣工予定の新文化館「道しるべ」に拡張移転する図書館は、きっとそのための大きな力となるでしょう。

(中高校教頭 深川 久)